忍者ブログ
≪二次創作倉庫≫PC閲覧推奨
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※スクアーロ女体化(ディーノ×スクアーロ♀)です。
※恋人未満、セフレなかんじ




適度に汗ばんで肌と肌がなじむ感覚が心地よい。
「シャワー先に使うぜ?」
呼吸を整える事に集中していたオレにディーノはそう言ってバスルームへ向かった。オレに気をつかって優しくそう投げかけているわけじゃない。日頃からレディーファーストを徹底している男にとってはお決まりの台詞で挨拶みたいなものだ。
実際はオレのことなんてどうでもよくて、軽く汗を流してさっさと眠りたいだけ。行為さえ終わってしまえば男なんてこんなものだ。別に恋人でもないし金銭や愛情のやりとりもない体だけの関係だから特に文句もない。
それにディーノは昔からの知り合いだし、オレが遊んでいる男の中じゃ顔も身体も身分もテクニックもダントツで、不満を言うような要素はなかった。むしろオレでいいのかとききたいくらいだ。金を払ってでもドン・キャバッローネに抱かれたいという女たちを山のように知っている。うまくいけばディーノの愛人や妻になれるかもしれないのだから、彼女たちにとってはその価値があるのだろう。
ディーノがオレを抱くのはそういった煩わしいリスクがないからかもしれない。へなちょことはいえ、今はファミリーを背負う人間だ。然るべき相手を決めるまで浮いた話がない方がいいに決まっている。同盟ファミリーの暗部に属するオレは表立たない人間だったし利害が一致しているなら金を払って娼婦を呼ぶよりも安上がりでいい。

オレにとってセックスなんてただのスポーツだ。日常のストレスを発散させるための手段でしかない。
ランナーズハイとは少し違うけれど、相手によってはそれなりに快感も伴うのでテクニックのある男となら気持ち良くはなれる。それは体調や気分によって激しく変動するものだけれど、そういう付き合いだけをする相手は経験値の高さからか、行為のうちに最低一度くらいは満足させてくれるスキルを持っている男が多かったし、オレはそういう男しか相手にしないようにしていた。
不特定多数というわけではない。相手はある程度選んでいる。だからといって行為に伴うリスクがなくなるわけではないけど、セックスフレンドなんて持っている時点で先の事に少なからず投げやりになっている部分はあったんだと思う。
今思えば対等な関係ですらなかった。オレは自分が快感を得るために動くことはあっても相手のために奉仕するようなことはなかった。したい時に都合のつく男を利用していただけ。オレがそういう女なんだと相手もわかって応じていたし、付き合って欲しいなんて面倒臭いことを言ってくる男もいなかった。きっとむこうだって本命の女にするように優しくオレを抱いたりはしていない。確認したことはないけれど、文句を言われたとこもないし、気を使わずにそれぞれの快感だけを求めていたならギブ&テイクは成り立っていたのだろう。

そもそも体の関係から始まる恋愛なんてろくなものがない。愛情なんてセックスでの快感よりも曖昧で薄っぺらなものだ。体の相性が合えば気が合わなくてケンカしてもセックスになだれ込んでしまえばどうでもよくなる。
愛情の証とか交換なんて言葉よりも「命の洗濯」や「なんとなく」、の方が行為に至る理由としてはしっくりくる。それだけの経験しかしていないと言われればそれまでだけど、お金や愛でセックスを買いたとは思わなかった。他人との交わりを求めつつ、根底の部分ではオレは人と付き合うのが苦手なのだろう。
男なんて無限にいるし、いくらでもごまかせる上辺だけの言葉や目に見えない愛や約束なんかよりも、ずっとわかりやすく、手ごたえがあるセックスだけの関係が精神的に楽だった。主以外に大切なものなんて持ちたくなかったし、ましてやそれが仕事に関係ない人間ならば尚更だ。たかがセックスをするだけの人間をそんな風に想うなんて負担以外の何者でもない。
汚れている、なんて言われても手遅れだし、じゃあどうすればキレイになれるのかたずねても誰もまともに答えてはくれない。
別に自分を罰したくてこんな風になったわけじゃないし、罪悪感に苛まれているならとっくにやめている。難しく考えるような事だとも思わない。気持ちの有無が重要だという人の方が多いけれど、結局他人にどうこうできるものではないのだ。

だからこんな関係はいつか終わる。
あいつが然るべき相手とやらを決めればオレは潔く身を引くつもりだしそれが当然だと思っている。どうやったって釣り合わないし、同盟関係とはいえあいつはれっきとしたキャバッローネファミリーのボスで、オレはボンゴレの裏組織の人間だ。表できらきらしているあいつの隣に立てるわけないし、キャバッローネの利益にすらならないだろうから選ばれることはまずない。
それはことあるごとにディーノ本人にも言っている。余計な誤解を生まないためにも必要な事だろう。学生時代と今では互いに背負っているものが違うのだ。
あいつは守るべきものがある。地位も歴史も人もなにもかもの頂点に生まれついた存在だからだ。別にそれを羨ましいとは思わない。昔のへなちょこぶりを知っているから、まぁあいつなりに苦労してきただろうけれど、今はそれをちゃんと乗り越えている。
オレはどちらかというと使われる側の人間で、死ぬまであらゆるものから恨まれ、疎まれ、命を狙われ続けるのだ。争いの中でしか生きられない。そういう生き方をしてきた事を後悔してないし、そうでなければとっくに死んでいたと思う。

特定の女を作らないディーノは、パーティーではここぞとばかりにクズ共の娘を押し付けられている。もちろんやんわりと断っているが、二十代半ばにもなればそろそろ形だけでも伴侶を決めないと周りがやきもきしてうるさいだろう。オレが知らないだけで候補くらいはもういるのかもしれないが。

「お前そろそろ結婚しろって周りに言われねぇのかぁ?」
「どーしたんだよ、急に」
ぼーっとしているオレに、シャワーから戻ったディーノが冷蔵庫から持ってきたペットボトルの炭酸水を渡す。
「急じゃねぇ。お前、自分の立場わかってんだろぉ」
飲みながらそう返すと、「今はそーいう話やめようぜ?せっかくこうしてお前といるんだし」とオレの頬に零れた炭酸水を拭いながらあからさまにはぐらかされた。「…オレはなぁ、お前と付き合っちゃいねーが、お前に婚約者ができたらすっぱり別れるぞぉ。そんでもう仕事以外は口もきかねぇつもりだぁ」
「なんでそんな…」
どの女にもそんな風に困って見せるのだろうか。甘く苦笑しつつもめんどくさい事になってきた、という雰囲気を隠しもせずにディーノはオレを抱き寄せる。機嫌を取るように後ろから包み込まれたってオレは流されてやらない。
「変な噂流れたらお前だって困るだろぉ。それにオレはお前の妻のファミリーから命を狙われるなんてまっぴらだからなぁ!そんな簡単に命くれてやるつもりはねーけど揉めたらお前だってボンゴレだって困るんだろぉ?」
別れの言葉も決めてあるんだぁ、とオレが言うと、突然の展開についてこれていないはずのディーノは一瞬真顔になって「オレもお前になんて言うかずっと前から決めてるんだぜ」なんてほざいた。
「ほぉ…、なんて言うつもりなんだぁ?ちなみにオレは『オレの事は忘れろ』って言ってやるからなぁ!」
「じゃあオレは…『オレの事、ずっと好きでいてください』って言うから」
少し俯きながらも間髪入れずにディーノはゆっくりとそう答えた。
「なっ……」
なんの根拠があるのか、背後の誇らしげなディーノの顔をまともに見るのが恥ずかしくなって思わず前を向く。
いつもみたいにバカじゃねーの、と毒づくこともできなかった。なんの期待もしていなかったし、する資格もないと思っていたからプロポーズでもされたみたいに胸がいっぱいになる。
ずっと好きで、なんて、今もオレがお前を好きでいる事が前提じゃねーか。ふざけんなよ、へなちょこのくせに。
「スクアーロ?」
涙がこみ上げるのを抑えるのもバカらしくなってやめた。
別にこいつの口から好きだって言われたわけでもないのに、なんでオレがお前を好きでいなきゃいけないんだ。惰性でいいから一言、お前から言ってみろよ。
オレが泣いている事なんて、零れ落ちた涙があいつの腕に当たってわかっているはずなのに、さっきの炭酸水みたいに拭ってくれたりはしなかった。そのかわりにさっきよりもしっかりとオレ抱きしめる手に力が込められた。
勝手に涙がぼろぼろと零れていく。
今、互いが誰よりも近くにいることだけが全てで、この先もそんな一瞬のためだけに曖昧な関係を続けていくのだろう。矛盾していたっていい、きっと冷たくなんてできない。ディーノだってわかっていて決定的な言葉だけは伝えてくれないのだから。

あいつとは、セックスよりもキスがしたかったのだと、いつも別れてから気付く。愛してるとも言ってくれないひどい男なのに期待してしまう。
そう、どんなにきれいごとや言い訳を並べたって、結局オレはあのへなちょこの唯一無二の存在になりたいだけなのだ。



fin.

拍手[0回]

PR
色々
ブログ内検索
カウンター
バーコード
アクセス解析
Admin / Write
忍者ブログ [PR]