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智さんから頂いたイラスト

その日は会議でポーランドがウクライナの家へ来ていた。
翌日に予定がなければポーランドがウクライナの元に泊まるのは、ここ数年では恒例の事だった。

「なぁライナ、今日これ着てやらね?」
そう言ってポーランドが差し出したのは白のロングドレスだった。
「え、これ着てする…の?」
ウクライナは目を丸くして答えた。
「たまには変わったことしないと飽きるし。」
「でもこのドレスって……」
受け取ったドレスをウクライナはもの思わしげにまじまじと見る。ポーランドには彼女の憂いの正体がわかっていた。
「心配すんなって、これわざわざライナのサイズに合わせて作ったんよー」
「え…そ、そうなの?」
「な?着ないともったいないっしょ?」
急に晴れやかな表情になったウクライナにポーランドは目くばせをした。
「それにオレもこれ着るしー」
ポーランドは自分用に仕立てたウクライナと同じ白色のドレスを自分に当てて見せた。
「それって何か…女の子同士みたいね」
「そこがいいんよ~」
上機嫌なポーランドはいきなり脱ぎだした。仕方がないのでウクライナも着替え始める。
「あ、ライナここで着替えるん?じゃー見る楽しみなくなるし、オレあっちで着替えてくるわ。」
ポーランドはそう言って脱いだ服とドレスを持って隣の部屋へ移動した。
普段はわがままで通っているポーランドがこんなにはっきりと気を使うのは自分の前だけだとウクライナは自負している。もちろん、他の人に対して全く気を使わないというわけではないが、さりげない気遣いとは異なるその扱いは自分との関係に少しは後ろめたい気持ちがあるからなのだろうか、とウクライナは時々思う。
「……気にしちゃダメってわかってるのにな…」
ウクライナはため息をついてドレスに着替えた。

「ライナー、もう着替えたん?」
ノックの音と同時にドアの向こう側からポーランドが尋ねる。
「あ、うん。今ちょうど着替え終わったところよ。」
その返事をきくと、ポーランドはウクライナのいる寝室に入ってきた。頭にはドレスと同じ白色のリボンをしている。ドレスが翻る度に、裾に刺繍されたビーズがきらきらと光ってとてもきれいだな、とウクライナは思った。
「ポーランドかわいい…」
「ライナも似合ってるしー!そのドレス、オレがデザインして作らせたんよ。」
ポーランドはそう言うとウクライナの両肩に手を置いて軽く自分の方へ引き寄せた。
「でもあの…これ、胸開きすぎじゃない?」
見下ろされる視線にたまらなくなってウクライナは尋ねる。
「ん~…ドレスだし、これくらい見えてる方がよくね?ライナせっかくスタイルいいんやし、恥かしがってないでもっと見せてやればいいんよー。」
ポーランドは手に持っていたドレスと同じ色のリボンをウクライナの髪に結んだ。
「これでおそろいだし。」
そう言いながらポーランドは満足気に子どものような笑みをこぼした。背後の窓から差す陽の光がその笑顔を更に眩しくしていた。

「…ねえポーランド、まだ夜には早い時間だけど、これからどうするの?」
「ん~まだ三時くらいやしね…とりあえずおやつでも食べながら考えん?」
ポーランドはそう言うと大量に買い置きしてあるお菓子を持ってきた。
「イタリアから貰ったジェラートとかもあるっしょ?ライナどの味にするん?」
「この間送ってきたやつね…全部味見してみたいな。」
「じゃー一緒に食う?」
「そうね、今お皿出すわね」
ウクライナも台所に立ち、ポーランドとおやつの準備をした。
これも他では滅多に見られない光景だとウクライナは感じた。少なくともリトアニアと一緒の時は彼に準備を促すことはあってもポーランド自ら率先して準備するなんてことはないだろう。そう考えると、今自分はとても貴重な体験をしているんだなとウクライナは思った。

準備ができるとポーランドはベッドサイドのテーブルにお菓子や飲み物を運んだ。そして二人はベッドの上でくつろぎながらお菓子を食べつつ、テレビを見たりした。
「ライナ、ジェラート食べないん?早く食べないと溶けるし。」
ポーランドがそう言ってジェラートをスプーンで掬ってウクライナに差し出した。ウクライナはそれをポーランドのいる方へ身を傾けてついばむように食べた。
完全に食べ切れなかったそれがウクライナの口から少しだけ零れ落ちる。
「あ……」
「…ライナ、エロいしー」
ポーランドは言い終わるのと同時にウクライナの口元へ顔をよせ、それを舐め取った。
「んっ…ポーランドの方がいやらしいわよ…」ウクライナがそう答えると、ポーランドはジェラートの入ったガラス皿を差し出した。「なあ、今度はライナが食べさせてくれん?」
ウクライナの肩にわずかに寄りかかりながらポーランドは色っぽい視線を投げる。
少し困った顔で大きくため息をつくと、ウクライナはポーランドの要求を受け入れた。
ウクライナから差し出されたジェラートをポーランドは嬉しそうにほうばる。
「…やっぱライナの方がエロいし」
何口目かのジェラートを食べた時、ウクライナと目が合ったポーランドは目を反らしながら言った。
「え、な、なんで?私何もしてないじゃない。」
「確かに何もしとらんけど、なんかエロいんよ。…やっぱその胸なんかなー」
ポーランドはそう言いながらいきなりその胸に触れた。同時にウクライナが小さく悲鳴を上げるが、ポーランドは気にせず掌に収まらないそれをまじまじと見つめていた。
「ちょっ…ポーランド、ジェラートこぼれちゃったじゃない~。」
「なん?あ…ごめんだしー」
ポーランドはウクライナの胸元や腕にこぼれたそれを見てばつが悪そうに謝ったが、その表情は新たな遊びを思いついたような子供の目をしていた。
「ポーランド…また何かろくでもないこと考えてるでしょ。」
「あ、わかるん?だってライナそれ…」
「エロいっていうんでしょ、もう…」
あきれたようにウクライナが言うとポーランドはにやっと笑ってその口を塞いだ。
「んんっ…ポーランド?」
「ジェラートもったいないしー」ポーランドはウクライナの首筋から胸の辺りまで舌を這わせながら、ほぼ液体になったジェラートを舐めとった。
明らかに執拗なその愛撫にウクライナはわずかに甘い声を上げる。
「あ…ポーランド、やぁ…ん……」
「んっ…」
ポーランドは唇を放すと、ウクライナの持っていたガラス皿をサイドテーブルに置いた。そして向かい合ったウクライナをうっとりとした目つきで眺める。
「なぁライナ、これ良くない?」
「え…?」
きょとんとするウクライナに、ポーランドはドレスの裾を持ち上げてもの言いたげに覗き込んだ。
「こういうの、楽しいっしょ?」「んーまぁ楽しいけど……なんか複雑な気分だわ。ポーランドって私が思ってたより倒錯的だったのね。」
ウクライナはいつもより少し低い声でそう答えた後、一転してくすくすと笑った。ポーランドもそれにつられて笑う。その純真な笑顔にウクライナはたまらなく愛しさを感じて、ポーランドをその腕に抱きしめた。
「ちょっ…ライナ!?」
「私、ポーランドが動揺しているくらいが可愛くて好きだわ。」
「~っ、…ライナには適わんしー」
ポーランドは苦笑してウクライナの背中へ腕を絡めると、その胸に顔を埋めた。



   fin.


***
上部の素敵イラストは智さんからの頂き物です。ありがとうございます!!
女装疑似百合的なものを目指していたんだと思います。

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