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鮫はその性格を裏切って意外とハイソサエティーな趣味を持っている。
それはクラシック音楽や演劇鑑賞だの美術館めぐりだのといったものだが、それらへの興味自体は主であるオレの影響を強く受けているようだ。


「ボス、今度の日曜暇かぁ?夕方からコンサート行かねぇかぁ?」
「…またクラシックか。演目は何だ。」
「レスピーギだぁ。ローマ三部作とリュートのための古風なアリアとフーガ」
こいつはバロック系の音楽と派手な曲が好みらしい。だったらクラシックじゃなくてもいい気がするが、落ち着きのないこのドカスがそれなりにめかしこんで大人しく舞台に魅入っているものだから一緒に行くのは悪くねぇ。だが、レスピーギは聞きすぎだ。その演目だって何度聞いたか数え切れない。しかもこいつはご丁寧にその指揮者のCDやわかっている演目の曲をオレに無理矢理予習させる念の入れようなのだ。またローマを聞かされるのかと思うとめまいがした。
「去年も聞いたじゃねぇか。」
「指揮者もホールも違うしいいじゃねぇか。ローマはバンダ使うだろうから演出も楽しめるしよぉ」
アンコールに何やるか賭けねぇかぁ?とカスが品のない事を言うので何発か軽く殴った。
簡単にsiの返事をくれてやるとコンサート当日まで予習をさせられる。
こいつの趣味に対する執念は異常だ。オレが大人しく鑑賞しなければ寝室のBGMにまでしかねない勢いなのだ。行為の最中にクラッシク音楽なんざ聴けるか。万が一そんな事になってこのカスがオレより音楽に集中した日には、カスかクラシック音楽のどちらかをこの世から抹殺するしかない。
自分がされて嫌な事を他人にするなと習わなかったのか。何度殴られても繰り返すこいつには学習機能が備わっていないのかもしれない。見事なまでにこの手の事に関しては全くオレの命令をきかずにこれはオレのためだと呪いのように言い放つ。
てめぇに言われなくてもそれくらいの教養はある。大体、お前が興味を持ったのもオレにくっついていたせいじゃねぇか。のめりこむならひとりでやれ。オレを巻き込むな。何度言ってもこいつにはオレの声など聞こえていないのだ。
演劇や美術鑑賞に関してはルッスーリアやベルフェゴールともよく行っているらしい。
オレがいない時はクラシックコンサートやオペラ、バレエの舞台のほとんどはベルフェゴールが付き合っている。オレがこんなに嫌がっているのだから今回もベルフェゴールと行けばいいだけの話なのだ。別にこいつらじゃなくても他の部下や跳ね馬だの、誘えば喜んでついてくる輩はたくさんいる。
「なんでオレなんだ。他の奴等と行けばいいだろ。」
「他の連中は舞台に集中しねぇんだよ。オレばっか見ててまともな感想すら言えやしねぇ。せっかく行くならちゃんと終わった後話ができる奴がいいじゃねぇか。」
ボスならオレと一緒に舞台見てくれるだろぉ?と気持ち悪いくらい愛想良く喋る。そんなに思い出を共有したいのか。オレにはよくわからん。
「てめぇは、アレだな。」
「なんだぁ?」
「好きな奴と美味いもん食ったりいい景色を眺めたりするタイプだ。」
「…そんなの普通じゃねぇかぁ?美味いもん食ったらよぉ、これボスさんにも食わせてやりてぇって思うだろ。」
それがてめぇの「好き」か。
「そういう時に物事を共有してぇと思い浮かべる相手ってのが好きな奴だろ。」
「…そんなもんか?美味いドルチェ食ってて、ウチのガキ共がこれ食ったら喜ぶだろうなぁとか思うのもそうかぁ?」
「んなもん知るか。てめぇで考えろ。」
「なんだぁボス、ご機嫌ななめだなぁ」
鮫は声を落としてオレの視界に映るように正面に立ち、目を細めながらその腕を首筋に絡ませる。宥めるようなその仕草はこいつの常套手段だ。
オレをコンサートに誘うカスは嫌いじゃねぇ。演目についてのしつこさを除けば、気まぐれなオレの機嫌を損ねないようにあらゆる場面で従順になり、当日までそれが続く。
結局オレはカスの色じかけに丸め込まれた形でSiと返事をくれてやる。放っておけば他の男にも秋波を送るような真似をしかねないのだからやむを得ないのだと自分に言い聞かせながら。



fin.


***
ボスとカスと音楽。

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