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※エロはありませんが、お下品です。
  ポーたちが日本のSEXPOに行く話。
  ちょっと英日。



その日、ポーランドは内心とても喜んでいた。珍しくリトアニアの方からポーランドの家を訪ねてきたのだ。二度寝を決め込んでいたポーランドは寝ぼけた頭でふらふらと寝巻きのまま玄関へ向かい、ドアを開けた。
しかしポーランドの気持ちとは逆に、リトアニアは青筋を立てながらポーランドの肩を揺さぶり、開口一番にこう尋ねたのだ。


「ねぇ、セッ○ス博覧会って何?」


「…え、リトってば昼間からそんなこときくん?やらし~。」
あまりの予想外の発言にポーランドは一瞬頭が真っ白になった気がした。ありったけの理性を総動員して、いつものように何とか冷やかしを含めて切り返したが、今日のリトアニアはどうしたというのだろう…。
リトアニアは自分で問題発言をしたくせに、赤くなってしばらく黙り込む。
「あ…いや、そんなんじゃなくて!…記事…そうこの記事!これ何なの?」
リトアニアの見せた記事は、日本の家で初めてセッ○ス博覧会が開催されるという内容の記事だった。ちなみにポーランドの家は毎年セッ○ス博覧会が開催されている国として紹介されている。
「…とりあえずリト、せっかく来たんだから中にでも入るしー」
そう言ってポーランドは家の中にリトアニアを招き入れた。
自分の家でもないのにリトアニアは自分の家でするのと同じようにポーランドと自分の分のお茶を入れた。
「ポー、お茶入ったよー」
「今行くしー」
は着替えてリビングに戻ってきた。ピンクのフリルのワンピースを着ている。女物が恐ろしく似合う幼なじみを見て、リトアニアはため息をついた。
「ポーってば、また女装して…たまにはカッコイイ男物でも着てみたら?」
「えー、そんなん着たらリトと一緒に手つないで歩けないしー」
「……」
リトアニアは呆れてそれ以上何も言わなかった。
「…で、さっきの話なんだけど…」
リトアニアはお茶を飲みながら真剣な面持ちで例のセッ○ス博覧会の話題に触れる。
「えー、まだリトそんな話するん?そんなんウチ毎年やっとるけど、世界中どこでもやっとるし、別に珍しくないと思うんよ。」
「そ、そうなの…?」
少し照れながらリトアニアが疑問の声を上げる。
「だったら日本に聞いてみるしー」
「え…いや、そこまでしなくても…」
ポーランドはリトアニアの静止を振り切って受話器を取り、ダイヤルを回した。
「もしもしー、あー日本?ポーランドなんやけどー。今度セッ○ス博覧会やるんよねー?オレんちで毎年やっとるからってリトがオレばっかり責めるんよ。え…何そんなに恥らっとるん?別に大したことなくね?え、じゃあとりあえず行くしー。…うんわかったしー。」
ポーランドは一度も弁明の機会をリトアニアに与えずに日本との電話を終えた。
「ちょ、ポー、日本さん何て言ってたの?」
「んー、来週やるから遊びに来いってー。」
ポーランドは結論だけを言って受話器を戻した。
「え、オレはいいよ別に。」
リトアニアは顔を真っ赤にして拒んだ。
「リトが知りたがってたのに、行かないん?」
「別に行きたいわけじゃないし…」
そんなもののためにわざわざ日本さん家まで行かなくても…リトアニアの表情はそう物語っていた。
「何…リト、恥かしいん?」
挑発的な目でリトアニアを見上げる。
「いや、そんなんじゃ…」
「じゃあ一緒に行くしー」
間髪入れずにポーランドはリトアニアを日本の所へ連れて行く事を決めた。



「…そんでー、最近のアダルトグッズはデザインとかも結構カワイイんよー。プレゼントを意識したやつとかはパッケージが豪華で、ポーチとかついとって~」
日本の家へ向かう飛行機の中では人目(耳?)も憚らずポーランドが大声でセッ○ス博覧会について語っていた。
「も、もういいから、ポー。周りに聞こえてるって。恥かしいよ…」
リトアニアが制するが、そんな事で止まるポーランドではない。最新のオ○ニーグッズやAV女優・監督の語らい、アンダーヘアーを染める専門店の話など、マシンガントークは続いた。
そんなポーランドの話を聞きながら、こんな事態になる原因が話題を振ってしまった自分にある事をリトアニアは猛省していた。

飛行機が成田空港に到着すると、律儀な日本がリトアニアたちを出迎えてくれた。
「日本ー!オレ、寿司食いたいんよー、どこか上手い所知らん?」
ポーランドは挨拶もせず、自分勝手な要求ばかりする。
「ああ、寿司でしたら後ほどいいお店にお連れ致しますよ。とりあえず無事に着いてなによりです。車を待たせてあるのでどうぞこちらへ。」
日本はポーランドの意見にも答えながら丁寧に案内をした。
リトアニアはその物腰の柔らかさに感心する。ポーランドに日本の十分の一でいい、空気を読む力と落ち着きがあればいいのに…と思いながら。
「ホント、すいません。こんな突然お邪魔してしまって…」
車の中でリトアニアは申し訳なさそうに日本に言った。
「いえ、構いませんよ。私今回の件に関してはあまり仕事を任されていませんし。…実を言うと国内での反応が複雑だったので、外の方の意見も聞きたかった所なんです。」
「はぁ…」
セッ○ス博覧会についてあまり理解してないリトアニアは、にこやかに笑う日本に愛想笑いしかできなかった。
「なぁ日本ー、日本の家はエロイものに規制厳しいって前にイギリスから聞いたんやけど、そこんとこどうなん?」
飛行機の中と同じように、何の恥じらいもなくポーランドはきいてくる。
「あぁ…私の所では確かに他の所よりは規制が厳しい面もあるかもしれませんね。あの…ア、アダルトビデオなんかはモザイクとか入ってますし。」
途中から少し恥かしそうに日本が答えるので、リトアニアは日本に親近感を覚える。
「へえーそうなん。他のグッズとかは?」
「え、他の…ですか。」
「ちょ…ポー、もうやめなよ。いきなり失礼じゃないか。それに明日会場に行けばわかるんだしさ。」
日本がどもるので、リトアニアはポーランドを制する。ポーランドも何かを察したらしく、文句を言いながらもとりあえずその話題は止めるのだった。


滞在中は日本の世話になることになっていたので、二人は日本宅に迎え入れられた。
リトアニアたちが初めて見る日本宅の建物の様式や全体の雰囲気に、二人は清新な気持ちになった。
目に映る全てのものが真新しい。リトアニアはそれらの発見を静かに楽しめたが、ポーランドはいちいち日本に尋ねてはしゃぐのだった。
「日本の家ってオレんちにないものだらけで楽しくね?食べ物とかも超楽しみなんだけどー。」
そう言ってポーランドは客間に通されてすぐ部屋の中を探索し始める。
「ちょっとポー、やめなよ人んちで。はしたないなあ。」
リトアニアは自分の荷物を軽く整理して、これから日本が連れて行ってくれるという観光に備えた。
「あ、リト、これすごくねー?日本の家の民族衣装だっけ?」
ポーランドは宝物でも見つけたかのように、居間の戸棚に置かれていた着物をリトアニアの所へ持ってくる。
「ああ、これは確か…キモノっていうやつだったかな?あとで日本さんにきいてみなよ。」
「うん。オレこれ欲しいかも!」
ポーランドは目を輝かせて答えた。


しばらくしてリトアニアたちのいる客間に日本が現れた。
「失礼します。そろそろ観光にお連れしようと思いますが、仕度は整いましたか?」
「ああ、はい。すみません、ちょっとちらかしてしまって…」
ポーランドが色々漁った部屋の惨状をリトアニアが日本に謝る。リトアニアの荷物は部屋の隅にきちんと整頓されているが、リトアニアのそれと比べると多すぎるポーランドの荷物と、元から客間に備え付けられていたいろんなものが部屋中に散乱している。
「ほら、ポーランド!もう行く時間だって。出かける準備しなよ!」
リトアニアに急かされてポーランドは部屋を漁っていた手を止め、渋々準備をし始めた。


観光は日本宅のそれと同様、二人にとって目新しいものばかりだった。
リトアニアは博物館や寺などが落ち着いていて気に入ったが、ポーランドが一番はしゃいだのは近年外国人に注目を集める秋葉原だった。
かわいいものが大好きなポーランドは元々日本の家のアニメに興味を持っていたらしく、メイドカフェや漫画、コスプレなどについて日本に尋ねていた。日本もアニメなどは得意なジャンルなので、ポーランドと楽しそうにコスプレの衣装を選んだりしていた。
リトアニアはそんなポーランドと日本に時折ついていけずに戸惑っていたが、それなりに観光を楽しんでおり、コスプレしたポーランドの写真を撮ってやったりした。


その日の夜は、ポーランドの希望通り寿司を食べさせてもらい、温泉にも入って二人は日本の家でのを満喫していた。


「リトー、見てみ~。これ日本に着せてもらったんよー。」
「……!!」
しばらく部屋からいなくなったと思っていたポーランドが着物姿で現れたので、リトアニアは絶句した。
「リトどうしたん?これ可愛くね?」
「あ、ああ。可愛いね…って、それ女物じゃないの?」
確かにポーランドの着物は女物ではあったけれど、黒地にい薄いピンク色の花柄と白や金の装飾が少しある着物で、帯は紫がかった赤色だった。
それは普段ポーランドが着ているような派手な色や柄からはかけ離れた、どちらかというと地味で落ち着いたものだった。「…なんかいつもの女装と雰囲気が違うね。」

それはリトアニアから見ても観光の延長かのように新鮮だった。
「あ、やっぱリトもそう思うん?これ日本に選んでもらったんよ。」
ポーランドは東洋人のような黒髪ではないから、鮮やかな色の着物だと全体が散漫としてしまう。だから着物の色を引き締めた方がバランスが良くなるのだ、と日本はアドバイスしたという。
「さすが日本さんだね。確かにポーランドは髪の色が明るいから、この方がいいと思うよ。」
あんまり誉め過ぎるとポーランドはすぐに調子に乗るとリトアニアはわかっていたが、派手で露出度の高い格好をされるよりは、落ち着いた色で露出のない着物を着ている方がいいな、と思った。
「…なあ、だったらリトは派手な柄でもイケるとオレ思うんやけど」
そう言ったポーランドの目は策略に満ちていた。
「は…?いきなり何言い出すの。」
「だってリトの髪なら派手なの似合うし~。オレ日本とリトの着物も選んどいたんよ。どうこれ、可愛くない?」
ポーランドが紙袋から取り出したのは明るい黄緑の地に赤や黄色、オレンジといったカラフルな花のモチーフに白の装飾のある着物だった。帯はリトアニアの瞳と同じ色にしたのだとポーランドは自慢げに言う。
「可愛いけど…それ女物でしょ。やだよ、女物なんて。オレは絶対着ないからね。」
リトアニアもポーランドのパターンは読めているので、応じる気は毛頭ない。
「え~着んの~?せっかく可愛いの選んだんに…」
ポーランドがふてくされていると、突然二人のいた客間の障子が開けられた。

「あれ……イギリスさん?」
こんな事をするのは日本ではないということは瞬時に理解できたが、障子を開けた人物はリトアニアたちにとってかなりの予想外であった。
ポーランドはすぐに人見知りを発動して(イギリスを知ってるにも関わらず)隠れられるはずもないのにリトアニアの背中顔を埋める。
「あれ…お前ら客か?」
イギリスは自分がその客間にいるのが当然であるかのように言う。
「あ、はい。お久しぶりです、イギリスさん。オレたちちょっと日本さんちのイベントを見せてもらおうと思って、ここに滞在させてもらっているんです。」
「あ~そうか。すまなかったな、いきなり開けちまって。明かりがついているからおかしいなとは思ったんだが。」
イギリスはばつが悪そうに謝罪した。
「ちょっ…イギリスさん!勝手にあがって何なさってるんですか!!」
すぐに血相を変えた日本がリトアニアたちの客間にやってきた。
「あ、いや日本、これは…」
どうやら勝手に家にあがりこんだらしいイギリスは必死で言い訳を始める。
「突然アポなしで上がりこんできてこんな……失礼にも程がありますよ!あなたがいつも使っている客間はご覧の通りお二人がしばらく使用します。あなたには別の部屋をすぐに用意させますので居間でお待ち下さい。」
口調こそ丁寧だったが、その言い方は明らかに色んなものを含んでいた。
「わ、わかったからそんなに怒るなよ。リトアニアたちにもちゃんと謝ったし。な?」
「あ、オレたちは気にしてないので大丈夫ですよ。」
見兼ねたリトアニアがフォローを入れると、イギリスは日本にこれ以上文句を言われないうちにとさっさといなくなってしまった。
「ホントすみません、あの方はいつも突然やってきて当たり前のように居座っちゃって…」日本が申し訳なさそうに謝る。
「オレたちの方こそイギリスさんの場所とっちゃって申し訳ないです…」
リトアニアも丁寧に日本に気にしていない事を再度伝える。
「そうですか。では私はあの方の部屋を手配しないといけないので失礼しますね。本当に申し訳ありませんでした。あ…着物の着付けが必要な時はいつでも遠慮なくお呼び下さいね。」
リトアニアに選んだ着物とリトアニアをちらちら見ながらそう言うと日本も客間を後にした。


「なあ…日本とイギリスってできとるん?」
さっきまで人見知りを発動していたポーランドが何事もなかったかのようにリトアニアに話をふる。
「…そのセリフ、日本さんたちの前で言わなかったのを褒めてあげるよ。」
リトアニアはこれ以上何かに巻き込まれたくなかったのでポーランドの問いには答えなかった。しかしポーランドが気付くくらいだからきっとそうなのだろうと思った。
「日本さんはまともな方だと思ってたけど、そうでもないのかなぁ…」
自分のために選ばれた着物を手にとってリトアニアは呟いた。
「なぁ、そういえばトーはそれ着ないん?」
横からポーランドが顔を出してきて上目遣いで再び要求する。
「…やだってさっきオレ言ったでしょ。」
ポーランドの目を見たら気持ちが揺らぎそうだったので、リトアニアは目を合わさずに答えた。
「…リトのケチ!!」
「ケチでいいよ。あ…もうこんな時間だよ、ポー。明日出かけるのは午後からだけど、あまり遅くまで寝たら失礼だし、もう寝なきゃ。」
そろそろ着替えて、とリトアニアはポーランドに促したが、ポーランドは怒って着物を脱ぎたがらなかった。
仕方がないので、明日オレもその着物着てあげるからとリトアニアは約束して、二人は眠りについた。


「ポー、起きて!もう九時だよ。」
長旅と観光ではしゃぎすぎて疲れたのか、ポーランドはリトアニアが何度起こしても中々目覚めてくれなかった。


「まだポーランドさんは目覚めませんか。ではリトアニアさん先に朝食を召し上がられますか?」
八時を過ぎてもリトアニアたちが起きている様子がなかったので、日本は心配して二人の部屋を訪ねた。リトアニアは七時頃から起きているらしいのだが、ポーランドが起きないと言う。
「あ、日本さん。オレは大丈夫です。ポーランドが起きてから一緒に食べるので、もうしばらく待ってもらえませんか?ホントご迷惑ばかりかけてしまって済みません。」
「まだ時間もありますし、気になさらないで下さい」
これは先に食べるとポーランドが怒るからだろうと日本は察した。そして何かありましたらお呼び下さい、と言い残して自室に戻っていった。
「ん…リト、誰か来とったん?」
寝返りをうちながらポーランドが訪ねる。
「ポー、やっと起きた?もう九時だよ、今心配して日本さんが来てたんだよ。」
いい加減起きてよね、とリトアニアはポーランドに着替えを渡した。

ポーランドが着替えている間にリトアニアは日本へ連絡をして朝食の仕度をしてもらった。日本は準備がよく、和食と洋食のどちらがいいかきかれた。せっかくなので和食がいいだろうと判断して和食を準備してもらう。

しばらくして朝食が二人の部屋に運ばれた。
生卵や海苔など見慣れないものがあり、ポーランドもリトアニアも食べ方がよくわからなかったが、日本が事前に説明してくれたので問題なく食べることができた。

「では午後まで時間がありますので、その間ご自由におくつろぎ下さい。もし何かしたい事があれば何でもおっしゃって下さいね。できる範囲ならご用意しますので。」
日本はそう言うと客間を退室した。

「日本さんてホントよくできた人だよね。痒いところに手が届くっていうか…オレこんな完璧な接待受けるの初めてだよ。」
「日本ってああ見えてオレらよりかなり年上なんよね?だからじゃね?」
素っ気無くそう言うと、ポーランドは突然日本の家の最新アニメDVDが見たいと思い立って内線を入れた。

ポーランドがずっと部屋でアニメを見ているので、リトアニアは少し外を散歩する事にした。
見たことのない風景、聞きなれない言葉。リトアニアは自分の家から遥か遠い東の島国に来たのだと実感する。
「ロシアさんちよりも東なんだものなぁ・・・」
日本の家はリトアニアと同様、ロシアの隣国である。それにも関わらず、こんなにも違った文化を持っている事にいかにロシアの家がどれほど広大であるかを実感する。
隣の隣っていうには遠すぎるしなぁ…。
リトアニアはこんな所に来てまでロシアを思い出す自分はどうかしてると思った。


どうせポーランドは時間なんて気にしながら行動しないだろうと思い、リトアニアはポーランドが仕度する時間を考慮して早目に戻った。

「お、リトアニア外出してたのか?」
「おはようございます、イギリスさん。ちょっと周辺を散歩してたんです。」
玄関でリトアニアはイギリスと会った。
黒いワイシャツにグレーのスラックス。Tシャツにジーンズとまではいかないが、イギリスにしては珍しくラフな格好をしている。
「そういえばお前らここに何か見に来たんだよな?何かあるのか?」
唐突にイギリスは尋ねた。
「あ~えっと、ちょっと卑猥なイベントがありまして…」
日本さんからきいてないのかなぁと思いながらリトアニアは仕方なく答える。
「卑猥?日本でか?」
「セッ○ス博覧会…SEXPOってやつです。イギリスさんならご存知ですよね?」
「あーなんだ、あれか。そんなもの見に来たのか?」
イギリスはリトアニアたちが評判の悪い映画をわざわざ見に来たかのような反応をした。

「ポーランドの家でもよくやっているんだろ?そっちの方が近くないか?」
「まあそうなんですけど…ポーランドが暴走しちゃって、セッ○ス博覧会を一番近い日程で開催予定の日本さんにお世話になるはめになっちゃったんです。」
「そうか…お前も大変だな。」
リトアニアは同情の目を向けられたが、距離からいえばリトアニアたちよりもずっと遠い所からアポなしで来るイギリスもどうなんだろう、とリトアニアは思った。

「そういえば、イギリスさんはどうしてここに?何か会議でもあるんですか?」
「オレか?特に理由はないぞ。」
何故か自信たっぷりに答える。
「そうですか…」
それからリトアニアとイギリスは適当な社交辞令をいくつかやりとりしてそれぞれ部屋に戻った。

案の定ポーランドは何も準備していなかった。リトアニアが部屋に戻ってきても気付きもせず、テレビに向かってゲラゲラ笑っている。
「ポー、そろそろ出かけるよ。準備しなよ。」
「えー、今いいところなんだけどー」
リトアニアは時間を気にしながらポーランドの見ているDVDが一段落するまで待って出かける仕度をさせた。


「ポー、ほら急いで!また日本さん呼びに来ちゃうよ。いい加減時間ぐらい守ろうよ。」
「…だったらリト先に行けばいいし~」
そういう問題じゃないでしょ、と言いながらリトアニアはポーランドの手を引く。

「あ、リトアニアさん、車を表に待たせてあるので先にお乗り下さい。私は忘れ物を急いでとってきます。」
「あ、はい。わかりました。」
玄関ですれ違った日本は、どちらが保護者的立場なのか理解していたのでリトアニアに必要事項を述べてぱたぱたと家の中へ戻っていった。

「リト、楽しみ?」
「え、今から行く所?」
「そうに決まってるし!っていうかこのためにここまで来たんやし~。」
今から向かう先は二人の来日目的のセッ○ス博覧会会場だ。
「少し…ね」
リトアニアは複雑な気分だった。ポーランドや日本と「そういったもの」をこれから見に行くというのは中々考えられない事だからだ。
ポーランドはともかく、日本さんもいるしなぁ・・・ポーランドが日本さんの迷惑になるような事しなきゃいいけど。

「なぁなぁ、イギリスも来るんかな~?」
「イギリスさんは特に目的があってここに来たわけじゃないみたいだし、もしかしたら一緒に行くかもしれないね。」
「イギリスこういうの詳しそうだし。あいつかなりエロいんよ、リト知っとった?」
「いや、あんまり知りたくないよ、それ。」
酔うと大変なのは以前からきいているけど、とリトアニアは付け加えた。ポーランドはその話に乗って自分がどれくらい迷惑をかけられたかを語り出す。

そこへ、噂のイギリスがやってきた。ポーランドたちの乗っている車に乗り込んで来る。どうやら一緒に行くらしい。

「イギリスさんも一緒に行くんですね。」
リトアニアは話しかける。
「ああ、日本がすごく嫌がってたけどな。」
「日本さんて奥ゆかしい人ですもんね。」
「…そうか?そうでもないぞ。エロい事にはそんなに興味を示さないだけで、他のジャンルだと結構マニアックだったりするぞ。」
その「他のジャンル」が何であるかはリトアニアには何となく解かったので、そうですねと返す。その間イギリスとは初対面でもないくせにポーランドはやっぱり黙っていた。


しばらくして日本の仕度が整ったので、一行は会場へ出発した。

「あーこれならアメリカんちの方が過激だな。」
まぁ、規制の緩いアメリカの家と比べても仕方ないか、と会場を見渡して早々にイギリスは呟いた。
「でも、スゴイですね!オレこういう会場に来たの初めてです。」
リトアニアは感嘆の声を上げる。
ポーランドは自分の家で見慣れているせいか初めは特に反応しなかったが、興味を持ったブースを見つけると、そこポートアニアを連れて行った。

「ちょっ…ポーランド!順番に見ようよ~」
「リト、これ似合うと思わん?」
ポーランドがリトアニアを連れて来たのはコスプレ専門の業者のブースだった。昨日も秋葉原で着ていたようなフリルのたくさんついた白いエプロンを見せる。
「それ女の子用じゃないの?大体それいつ着るの?ポーランドは料理もしないくせに。」
呆れながらリトアニア言うと、ポーランドはいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「オレじゃなくてリトが着るんよ。裸エプロン。」
「なっ…何言ってるの!オレはこんなの着ないよ。」
「いや、案外似合うんじゃねー?」
「そうですね、新ジャンルを開拓するのもいいかもしれませんよ」
リトアニアが反論する背後からポーランドの意見を肯定する声が聞こえた。

「なっ…日本さんまで何言ってるんですかぁ。オレにこんなの似合うわけないですよ。」
リトアニアはこのままだとポーランドに強引に着せられそうという危機を察知して泣きそうになりながら訴える。

「リトアニア、オレはこういうの趣味じゃないが、日本がいる時にコスプレの話が始まったのは仕方がない。諦めろ。」
ぼそっとイギリスがリトアニアに降伏を勧める。

イギリスは早々にリトアニアたちに背を向けて他のブースへ向かう。そしてリトアニアの目の前には、コスプレ文化について語り出す日本の姿があった。ポーランドは自分で言い出しておいて、もう違う衣装を漁っていた。


ポーランドがコスプレ関係のブースに長くいたため、リトアニアたちは時間をかけて他のコーナーまわることはできなかったが、それでも会場を一通りは見ることができた。
ポーランドの言っていた通り、従来リトアニアのイメージしていたものから、説明されないとわからないいやらしさを全く感じさせないデザインのアダルトグッズまで色々あった。
音に反応して振動の幅に変化のつけられる最先端の技術を駆使したグッズにはリトアニアも驚かされた。「性」というデリケートな問題を、明るく堂々と考えていけるこのイベントに対してリトアニアが最初に持っていた先入観はすっかり払拭されていた。

気が付けば最初は少し恥かしそうにしていた(コスプレ以外)日本もいつの間にかイギリスといい感じに展示を見ていた。ポーランドは自分から誘ったくせに、本能の赴くままにあちこち見て動き回っていた。でもその姿があまりにも楽しそうなので、リトアニアもなんだか幸せな気分になった。

帰りの車の中でポーランドはイギリスたちとあのグッズのどこがすごくてどう良かっただのという話を繰り広げていた。人見知りはなおったのだろうか。
「リト、楽しかったっしょ?」
突然ポーランドがリトアニアに言葉をかけた。
「うん、楽しいっていうかびっくりした。何ていうか…思ってたより健全な感じ?」

「ああ、それ私も思いました!先入観で判断するのは良くないですね…。」
日本がリトアニアに同意する。
たぶん自分や日本のように感じた人は多いだろう。本当に聞くと見るでは大きな違いだな、とリトアニアは思った。

最初は乗り気じゃなかったけれど、色々体験してみるのも悪くない。結局ポーランドに振り回されてばかりだけど、やっぱりそういう所も好きだなとリトアニアは思った。



その日の夜はイギリスたちと四人で鍋をつついた。ポーランドの反応は相変わらず新鮮だ。リトアニアはお箸の使い方にも随分慣れて、日本にイギリスよりも上手だと褒められた。

風呂から上がって、リトアニアは忘れた事にしておきたかった着物を律儀に着て見せた。もちろんポーランドはそんな約束覚えていなかった。

「ポーランドが覚えてないんだったら着なきゃよかった…」
「やっぱりリトその着物超似合うしー!!」
リトアニアの呟きになんか耳も貸さず、ポーランドはいきなりリトアニアに抱きつく。

「ちょっ…日本さんの前でやめなよ!」
ただでさえ女物の着物を着ているリトアニアは赤面する。着慣れないものを着ているせいで中々抵抗できずに、すぐにポーランドに組み敷かれる。

「リト、他のコスプレもしてくれん?それとも今日オレが買ったグッズでも使う?」
自分の色気を最大限に生かしてポーランドが誘惑する。
「な、何て事言うの!これは約束したから着ただけだからね!っていうか何時の間に色々買い込んでるの?」
いい加減どいてよ!と日本の手前怒鳴ってはみるものの、ポーランドが素直にいう事を聞いてくれるわけがないとリトアニアは理解していた。
「リト赤くなってる。マジかわいいし~」
「ポー、話きいて…んんっ!」
強引にポーランドがリトアニアの口を塞ぐ。

「あ、では着付けも終わりましたし、私はこれで…おやすみなさい。」
日本は見ていられなくなって退室する。

日本が障子を閉めて自室へ戻ろうとすると廊下にイギリスが立っていた。
「イギリスさん…」
「あいつら人の家でよくやるよな…」
イギリスは日本から目をそらして言った。
「…欲求不満なんですか?昨日さんざんしたくせに。」
日本は怪訝そうにイギリスを見上げる。
「そ、そんなんじゃねーよ!」
「でも…確かに当てられますよね」
そう言って日本はイギリスを横目に見る。

「…なあ、今日お前の部屋に行っていいか?」
そういいながら日本の肩に手を回す。
「『今夜も』でしょう?」
日本はくすくすと笑い、ところであなたは変なグッズとか買ってないですよね?とききながら自室へイギリスを迎え入れた。


「んっ…ポーってば!」
リトアニアはとりあえず抵抗を続けていた。
「リトさっきから何なん?空気読めだしー。」
押し倒しはしたものの、キス以外に特にそこから先を考えてなかったポーランドはイラついた気持ちをリトアニアにぶつける。
「空気読めって…それはオレのセリフだよ!」
一体何考えてるの、とリトアニアは尋ねるがポーランドは答えようとしない。

「……」
ポーランドの瞳が滲んでいく。
「あーもう…ほら、泣かないで。」
リトアニアはすっかり力の抜けたポーランドを退けると、優しく笑って抱きしめた。
「リト…」
ポーランドがぎゅっと抱きしめ返す。それ以上何も言わなくてもリトアニアは「ごめんね」と言ってポーランドの頭を撫でる。

こういう時リトアニアは自分が悪くなくても必ず「ごめんね」と言う。ポーランドを怒らせたり困らせたりしてごめんね、という意味でリトアニアは言っているのだが、ポーランドには自分のわがままを諭されてるような気持ちになる言葉だ。

「ポー、今回はありがと。楽しかったよ。」
ポーランドが少し落ち着いたのでリトアニアはほっとする。
「…オレはリトがおったらそれでいいんだし。」
ポーランド少し頬を染めながらはぶっきらぼうに言葉を返す。リトアニアは「はいはい」と言ってそんな幼なじみの額に優しくキスをした。


こんな何気ない事が何よりも愛しくて。…振り回されるのも悪くないなぁとリトアニアは思った。



   fin.

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