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その日はとても早く目覚めてしまって、オレは隣で眠るポーランドを起こさないようにそっと寝室から出た。
朝ごはんでも作ろうかと思ったけれど、まだポーランドが起きるのは先だろうし、今日はオレもポーランドも休みだから急ぐ必要もないかと顔を洗いながら考えた。
まだ肌寒いけれど散歩でもしようかな、と白んできた空を見て思う。
ポーランドが心配したりしないように、外に出る前に書置きを残しておいたからこれで少しくらい帰りが遅くなっても大丈夫だろう。

着替えて外に出ると、まだ冷たいはずの風が少し暖かい気がした。随分と日の出も早くなって、春ももう近いのだと感じる。庭の木々もしばらくすると殺風景な今が嘘のように色とりどりの花を咲かせるだろう。

こんな風に季節が移り変わる時季になると、春が来るのを首を長くして待っているあの人の事がどうしても脳裏によぎる。毎年長すぎる冬を初めこそ楽しんでいるものの、次第にそれは春への憧れに変わっていくのだ。
…まぁ、春が来たら来たで今度は「夏、夏!」って言い出すんだけど、春が来て普段以上にはしゃぐあの人を見るのは結構好きだったな。
そう考え始めると、最近会っていないけど元気だろうかとか、いきなり電話したら不思議がられたりうざがられたりするだろうかなんてしょうもない事ばかり浮んでくる。

―どうしてひどい事ばかりされたのにオレはあの人を嫌いになれないんだろう。
……たぶんそれは、それだけじゃなかったから。

あの人の残忍さも知っているけど、子供のような純粋な部分があって愛情に飢えている事も知っている。いや、子供のように純粋だからこそ、あんな風に残忍になれるのかもしれない。
強くなる事こそが全てを手に入れる唯一の手段だとそれまでの経験から学んだのだろう。
そう思うと、今オレがポーランドと一緒にいられる事がなぜか後ろめたくてやりきれなくなってきた。…別にあの人に対して遠慮するような事なんて何もないのに。

でも巡る季節に喜ぶあの人とそれを分かち合ったのは確かなことで、決してそれはお世辞なんかじゃなかった。あの人が支配できないそれに一喜一憂するのを慰めたりするのは嫌ではなかったし、あの人が喜ぶ姿を見るとオレも何だか嬉しくなったから。
結局オレとあの人は一緒にいられないだけで、完全に嫌いになんてなれないのだ。


気が付けばすっかり陽は昇りきっていて、オレの視界は光に溢れるいろんなものがぼやけて見えるだけだった。
「…っ…ロ、シアさ……っ…」
口に出すまいと思っていたその名前を呟いた瞬間、緩んだオレの涙腺はもう止められなかった。
「リト、どうしたん?」
道端で立ち止まっていたオレにポーランドが追いついて声をかけてきた。
「ポー、なんで…」
オレが言いたい事の半分も言えてない状態だったにも関わらず、ポーランドは何かを察してくれたようで、「何も言わんでええし」と言って落ち着くまでしばらく待っていてくれた。
そして無言のままポーランドに手を引かれて帰路へついた。
「リト、手冷たくなっとるやん」
そう言うポーランドの手はとても温かくて、オレはなぜかまた涙がこみ上げてきた。
繋いだ手のぬくもりは、嫌でもオレは一人じゃないという事を感じさせてくれる。
……あの人は今も独りなのに。
「……っ」
少しだけ歩く速度が落ちたので、つないでいた手が離れそうになってポーランドが振り返る。
「…リト?」
「ごめ…何でもな……っ…」
喋ろうとすればする程涙が溢れてくる。
「何でもないわけないやん…」
ポーランドそう言っては優しくオレの頭をなでながら、また落ち着くのを待ってくれた。
それからどれくらいかかって帰ってきたのかオレは覚えていない。


家に着くと、ポーランドが温かい紅茶を淹れてくれた。そして「オレちょっと出かけてくるし。」と言い残してどかこへ行ってしまった。気を使われているのはわかる。早くいつもの調子に戻ってほしいと思われている事も。
オレだってあまり心配はかけたくないし、ポーランドに応えたい。そう思って台所に立って昼食の準備を始めた。

ポーランドは午後にオレがいつもの調子を取り戻しても、最後まで何もきかなかった。
パルシュキが食べたいとポーランドが言うので、おやつにオレがパルシュキを作っていると、ソファーでごろごろしていたはずのポーランドはいつの間にかいなくなっていた。でもポーランドが食べたいと言って作り始めたのだから、三時頃には戻ってくるだろうと思い、パルシュキをオーブンに突っ込んでお茶を淹れて待っていた。

しばらくするとポーランドが大声でオレの名前を呼びながらリビングに入ってきた。
「リト、リトー!ちょっと外来てみるしー!!」
「え…ポーランド、ちょっ…オレまだ料理中だってば。」
「ほんの少しだから大丈夫だってー。」
そう言ってポーランドはためらうオレの腕をぐいぐい引っ張って外へ連れ出した。

連れて行かれた先は今日オレが散歩したのとは逆方向の家の裏にある林だった。
「ポーランド、何かオレに見せたいものがあるの…?」
「ん…ほら、あれ見てみ。」
ポーランドが指差した先には小さな野ばらが咲いていた。
「野ばら?…きれいだね。」
「やろ?もうずっと前からオレは気付いとったんよ。で、今日来たら咲いとった。」
だからリトにも見せてやろうと思って連れてきたんよー、とポーランドは笑顔をほころばせる。
そんなポーランドを見ていたらなぜか目頭が熱くなった。
「もう春なんだね…。」
「…もう春なんやからリトもいつまでも辛気臭い顔しとらんで、笑ったらええんよ。」
「ん…そうだね」
そう言いながらオレは結局また少しだけ泣いてしまった。

「じゃーそろそろ戻るしー。オレお腹空いとるんよー。」
「え……ちょっと待ってよ、ポー!!」
ポーランドはオレの涙に気付かないふりをして急に走り出した。そんなポーランドをオレは慌てて追いかけていたらいつの間にか涙は止まっていた。
…この先もこんな風にオレを振り回してくれたらいいな、と心から思った。



   fin.

***
日記であげたやつをちょっと修正したものです。
ポーはあまり言葉で慰めたりしないかなーと思います。
そしてロシアさんが全く出てこなくてすみません…。

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