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※波立波前提。



「リトアニアには?」
「リトに言ったらいくらお前でも許さんし」
低い声で呟くようにオレがそう言うと、言うわけないじゃない、とイタリアは笑った。
節操がないのは今に始まったことじゃないし、戯れでこうなった事を後悔しているわけでもない。
こんなオレの素行を知ってもリトはたぶん咎めない。誰にもわからないくらいほんの一瞬目を見張って、それから少し哀しそうな顔をするだけだ。その表情がオレに罪悪感を呼び起こさせる事をリトはよく知っているのだろう。
「どうしたの、やっぱり後悔してる?」
オレと寝た事、と続けるとイタリアは無邪気に笑顔を投げつけてきた。
「そんなんじゃないんよ。」
少し間をあけてそう答えると「でもすごく傷ついた顔をしてるよ?」と彼は返してきた。
「後悔する程悪い事したとは思っとらんし」
「…でもリトアニアにはばれたくないんだね。」
「リトは知らない方がいいんよ。傷つくだけやから。」
だったらこんな事しなければいい、そんな目でイタリアはオレを見つめた後、「嘘。ホントはポーランドが傷つきたくないだけでしょ?」といつもより低いトーンで言った。
…そんなんお前もやろ?そう言い返したかったのに、頭がぼうっとして何も言えなかった。
イタリアは「オレお腹すいちゃった、何か作ってくるね」と言い残すとキッチンへと消えていった。しばらくすると何度か食べた事のある卵料理のかすかな匂いが鼻をつく。ふと食べ慣れたリトの料理が懐かしくなって、自虐的になっている自分に少し笑えた。
まだ夜明け前の早い時間だというのにこんなにも頭が冴えてしまったのは無意識に起こる罪悪感のせいなんだろうか。平気な顔をする度に傷つくのは自分自身だという事をイタリアはよく知っているはずなのに、どうしてあんな風に笑えるのだろう。
考えても仕方のない事なのにひとりでいるといつもこうだ。そんな思考をどうにかしたくてようやくオレは体を起こしてベッドから出た。
窓辺から見える遥か遠くの景色が白んできた空に溶け込んで眩しく光る。そんな情景をしばらく見つめた後、オレは焼きついた残像で次々と浮かんでくるリトの笑顔を無理矢理消した。



   fin.

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