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「ポーランド、今日は客間に泊まってくれないかしら?」
久しぶりにオレがライナの家につくなり、そう言われた。あまりにも意外なその一言に、一瞬オレの思考は止まった。
そんな事今まで言われた事なかったし、ライナの家に泊まれば一緒に朝まで同じベッドで過ごすのが恒例やったのに。
「何?ライナ、したくないん?」
「そういうわけじゃなくて……」
目を背けながら意味ありげに言うので、オレは腑に落ちない。
「あ…もしかして生理なん?」
「うん…」
きまり悪そうにライナは頷いた。
でもこれは不可抗力で、ライナが悪いわけやないんやから、そんなに後ろめたく思う事ないのに。
「まぁそれは仕方のないことやけど、それくらいで一緒に寝るのもダメなん?
オレ別にそこまで理性ないわけではないんよ?」
「ポーランドのそういう所は疑ってないわ。」
「じゃあ何で…」
「私が…我慢できないから……」
ライナは顔を少し赤らめてそう言った。
「…でもライナは今日はしない方がいいって思っとるんよね?」
「私の体調と気持ちは別よ。……ポーランドにはわからないかもしれないけど、生理中ってね、無性にしたくなるのよ。」
オレの言葉に反応するようにライナは顔を上げて言った。
「ふぅん、そんなもんなん?オレは別にそんなの気にせんよ。…ライナが嫌ならやらんし。」
「そういう問題じゃないのよ。」
…まぁライナの言いたいことは何となく理解はできる。体調的にはできんけどやりたいっていうのは男のオレには共感はできんけど。
確かにそんな状態でオレといたら生殺しかもしれん。
「…今日はしたくてもできんから、オレといるとライナが眠れんって事やろ?」
「うん…。」

オレは別にやることが全てだとは思っとらんから、それは我慢できる。少なくとも理由があるならそれくらいは理性で抑えられるし。
でもオレはどうしてもライナと一緒に眠りたい。これだけは譲れん。でもライナはそれが嫌だって言っとるし…どうすればいいん?
オレは何かいい方法がないかと考えをめぐらせる。

「ポーランド?」
ライナが心配そうにオレを覗き込む。
「別に怒っとるわけじゃないんよ。…ライナのせいやないし。」
「でも……」
「やれんくらいどうってことはないんよ。まぁ一緒に寝れんのはちょっとアレやけど……あ!」
「え、何?ポーランドどうかした?」
思いついた。たぶんこの方法でしかお互いの欲求を満たせない。
「ライナ、オレ客間に行っとくわ。そんで後からまたこっちに来るし。」
オレははやる気持ちを抑えられず、つい早口で言ってしまった。
「…どういう意味?」
ライナはいぶかしげにオレを見つめる。
「オレはライナがいないと眠れんし、ライナはオレがいたら眠れないんやろ?だったらライナが寝た後でオレがここで眠ればよくね?」
「……わかったわ。」
オレがいつものように不敵に笑ってみせると、ため息をつきながらライナは苦笑した。

「ライナ…」
ライナの表情が晴れたのを見てから、オレはライナの家の言葉で「おやすみ」と囁いた。
本当は抱きしめたかったけれど、煽っているように思われるのは嫌やったから、これで我慢することにした。
ライナは一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐにいつもの穏やかな笑を浮かべて「Dobranoc, dobrych snw」とオレに返してくれた。


一人でなんて眠れないし……でもライナの傍ならきっといい夢が見られるに違いないんよ。
そう思いながらオレはリビングへと向かった。



   fin.


***
Dobranoc, dobrych snw:ポーランド語で「おやすみ、良い夢を」
一人で眠れないポーランドと、二人だと眠れないウクライナ。


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