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繋いだ手からポーランドの温もりが伝わる。
笑顔で抱きつかれると、オレも同じように彼の背中に手を回す。
どんな時でも目を閉じれば、オレの掌や腕はその安らぎにたどり着くことができた。それは遠い昔、彼の手をとった時から始まったのだろう。
だからこの瞬間にポーランドが傍にいなかったとしてもそれは変わらないのかもしれない、そう思っていた。
ポーランドと離れてどれくらい経っただろう…。実際には二ヶ月も経っていないはずなのに、室内にいる時間が長いせいか、一年くらいここにいるような気がする。
ロシアさんはもう幾度となくオレを抱いたけれど、たぶん彼が本当に欲しいものはまだ手に入っていない。
毎晩のようにベッドに押し倒され、様々な事を強要される。両腕が自由になっている時、オレは必死でシーツを握りしめてあらゆる事に耐えなければならない。
どんなに抱きしめられても、決して彼を抱き返すような真似はしたくなかった。そう、この腕に残るポーランドの温もりはオレだけのもので、彼に分け与えられるはずのないものだった。
ただ苦痛を強いられるだけの行為。これが快楽だと言うのならば、それを得ているのは彼だけだろう。
それなのに彼は自分こそが被害者であるかのように振舞う。こんな風にオレを堕としておいて、自分だけが傷ついた顔をするなんて卑怯だ。
まだ肌寒い曇りの日。厚い雲の覆った空には、ぼんやりとわずかな光を太陽が放っていた。
「リトアニア」
昼間から行為に及ぶこの人は、時々すがるようにオレの名を呼ぶ。
優しくなんてしてやらない。それはオレの精一杯の抵抗のはずだった。
「ロシアさん…」
いつものように機械的な返事をしたけれど、見開いたオレの目に映る彼の表情に、なぜか胸がしめつけられた。
その行為自体には愛なんてなかったし、彼がこうしてオレを抱くのはきっと誰かの代わりだろうと思っていた。
「リトアニア…」
不意に大きな手がオレの頭を撫でる。
やるせないようなその瞳に見つめられると、オレはいたたまれなくてたじろいでしまう。まるで彼がオレに許しを求めているようじゃないか。
「…っあ……」
もう慣れてしまった部分もあるけれど、行為自体の身体にかかる負担は相当なもので、オレの思考を翻弄させるだけの力を持っていた。
要領を得ない言葉だけがぐるぐると頭の中を回る。それは宙に浮いたような感覚で、もう自分がこの世に本当に存在しているのかすらわからなくなる。
生贄のように彼の前に差し出されたオレの身体は、最早オレのものですらないのだ。
この行為にうしろめたい気持ちはずっとあったけれど、この罪は彼だけのものだった。彼だけのものだと思っていた。
けれど初めからこの背徳の味に逆らえるはずもなかったのだ。
「……っ、あ…」
オレが上の空だった事に気付かれ、ロシアさんは痛いくらいに抱きしめてきた。顔は見えなかったけれど、どんな表情をしているのかくらいは想像がつく。
…情にほだされたのはオレの方じゃないか。
何もかもをこの人のせいにしていたかった。この人の想いに応えずに、自分だけが虐げられているのだと思っていたかった。
苦しくなるだけのこんな気持ちに気付きたくなかった。
この人と何かを共有するなんて無理な話だと思っていたのに…。
オレは自嘲気味にため息をつくと、初めてその腕をロシアさんに向かって開いた。
「…リトアニア?」
ロシアさんは予想外のオレの行動にうろたえていたけれど、構わずに腕の力を強める。
「ロシアさん…」
わざと意味を持たせるような言い方をして、あとはもう成り行きに任せた。
窓の外でおぼろげに白く光る太陽が目に映る。
混濁する意識の中で、初めてオレは身体の奥に苦痛以外の感覚を感じた。これが情を交わすという事なのだろうか。
愛欲に溺れたわけじゃない。
けれど確かにその日、罪は二人のものになった。
脳裏にポーランドの眩しい笑顔がよぎる。
もうこれまでと同じような気持ちで彼に接することは決してできないだろう。オレが守っていたかった彼の温もりは、もう二度と思い出せないのだ。
「…泣いているの?リトアニア」
そう問われて視界が歪んでいることに気付く。このまま泣き崩れることができればどんなに楽だろう。
「…何でもありません、大丈夫です。」
オレがそう答えるのをきくと、ロシアさんは優しく額に口付けを落とす。
瞳をゆっくりと閉じながらそれを受け入れ、瞼の裏の残像がぼんやりと姿を現し消えてゆくのを感じた。そうしてオレは、わずかに抵抗を続けていた良心や希望と決別した。
絶望にも似た情火の成就がそこにはあった。
fin.
***
eleison:「憐れみたまえ」の意
キリ番9000hitを踏まれました内海さまよりリクエストの「立波前提の露立で露様の家に連れて来られたばかりの話」。
暗めでもOKとの事でしたので、こんなカンジになりました。書いてる本人はすごく楽しかったです。リクありがとうございました!!
キリスト教における「憐れみ」という言葉の意味の深さに、はかり知れないものを感じたイズミの妄想が暴走しました。
この「憐れむ」の語源は「内臓が身悶える」とかそんな意味だとどこかで見た記憶から、「憐れむ」というのは単なる「同情」ではなく、「痛みを共有する」とかそういう感じに近いのかな…と勝手に解釈した次第です。
笑顔で抱きつかれると、オレも同じように彼の背中に手を回す。
どんな時でも目を閉じれば、オレの掌や腕はその安らぎにたどり着くことができた。それは遠い昔、彼の手をとった時から始まったのだろう。
だからこの瞬間にポーランドが傍にいなかったとしてもそれは変わらないのかもしれない、そう思っていた。
ポーランドと離れてどれくらい経っただろう…。実際には二ヶ月も経っていないはずなのに、室内にいる時間が長いせいか、一年くらいここにいるような気がする。
ロシアさんはもう幾度となくオレを抱いたけれど、たぶん彼が本当に欲しいものはまだ手に入っていない。
毎晩のようにベッドに押し倒され、様々な事を強要される。両腕が自由になっている時、オレは必死でシーツを握りしめてあらゆる事に耐えなければならない。
どんなに抱きしめられても、決して彼を抱き返すような真似はしたくなかった。そう、この腕に残るポーランドの温もりはオレだけのもので、彼に分け与えられるはずのないものだった。
ただ苦痛を強いられるだけの行為。これが快楽だと言うのならば、それを得ているのは彼だけだろう。
それなのに彼は自分こそが被害者であるかのように振舞う。こんな風にオレを堕としておいて、自分だけが傷ついた顔をするなんて卑怯だ。
まだ肌寒い曇りの日。厚い雲の覆った空には、ぼんやりとわずかな光を太陽が放っていた。
「リトアニア」
昼間から行為に及ぶこの人は、時々すがるようにオレの名を呼ぶ。
優しくなんてしてやらない。それはオレの精一杯の抵抗のはずだった。
「ロシアさん…」
いつものように機械的な返事をしたけれど、見開いたオレの目に映る彼の表情に、なぜか胸がしめつけられた。
その行為自体には愛なんてなかったし、彼がこうしてオレを抱くのはきっと誰かの代わりだろうと思っていた。
「リトアニア…」
不意に大きな手がオレの頭を撫でる。
やるせないようなその瞳に見つめられると、オレはいたたまれなくてたじろいでしまう。まるで彼がオレに許しを求めているようじゃないか。
「…っあ……」
もう慣れてしまった部分もあるけれど、行為自体の身体にかかる負担は相当なもので、オレの思考を翻弄させるだけの力を持っていた。
要領を得ない言葉だけがぐるぐると頭の中を回る。それは宙に浮いたような感覚で、もう自分がこの世に本当に存在しているのかすらわからなくなる。
生贄のように彼の前に差し出されたオレの身体は、最早オレのものですらないのだ。
この行為にうしろめたい気持ちはずっとあったけれど、この罪は彼だけのものだった。彼だけのものだと思っていた。
けれど初めからこの背徳の味に逆らえるはずもなかったのだ。
「……っ、あ…」
オレが上の空だった事に気付かれ、ロシアさんは痛いくらいに抱きしめてきた。顔は見えなかったけれど、どんな表情をしているのかくらいは想像がつく。
…情にほだされたのはオレの方じゃないか。
何もかもをこの人のせいにしていたかった。この人の想いに応えずに、自分だけが虐げられているのだと思っていたかった。
苦しくなるだけのこんな気持ちに気付きたくなかった。
この人と何かを共有するなんて無理な話だと思っていたのに…。
オレは自嘲気味にため息をつくと、初めてその腕をロシアさんに向かって開いた。
「…リトアニア?」
ロシアさんは予想外のオレの行動にうろたえていたけれど、構わずに腕の力を強める。
「ロシアさん…」
わざと意味を持たせるような言い方をして、あとはもう成り行きに任せた。
窓の外でおぼろげに白く光る太陽が目に映る。
混濁する意識の中で、初めてオレは身体の奥に苦痛以外の感覚を感じた。これが情を交わすという事なのだろうか。
愛欲に溺れたわけじゃない。
けれど確かにその日、罪は二人のものになった。
脳裏にポーランドの眩しい笑顔がよぎる。
もうこれまでと同じような気持ちで彼に接することは決してできないだろう。オレが守っていたかった彼の温もりは、もう二度と思い出せないのだ。
「…泣いているの?リトアニア」
そう問われて視界が歪んでいることに気付く。このまま泣き崩れることができればどんなに楽だろう。
「…何でもありません、大丈夫です。」
オレがそう答えるのをきくと、ロシアさんは優しく額に口付けを落とす。
瞳をゆっくりと閉じながらそれを受け入れ、瞼の裏の残像がぼんやりと姿を現し消えてゆくのを感じた。そうしてオレは、わずかに抵抗を続けていた良心や希望と決別した。
絶望にも似た情火の成就がそこにはあった。
fin.
***
eleison:「憐れみたまえ」の意
キリ番9000hitを踏まれました内海さまよりリクエストの「立波前提の露立で露様の家に連れて来られたばかりの話」。
暗めでもOKとの事でしたので、こんなカンジになりました。書いてる本人はすごく楽しかったです。リクありがとうございました!!
キリスト教における「憐れみ」という言葉の意味の深さに、はかり知れないものを感じたイズミの妄想が暴走しました。
この「憐れむ」の語源は「内臓が身悶える」とかそんな意味だとどこかで見た記憶から、「憐れむ」というのは単なる「同情」ではなく、「痛みを共有する」とかそういう感じに近いのかな…と勝手に解釈した次第です。
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