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R15です。




ロシアのいない時を見計らってリトの家に遊びに来た。
キッチンでお茶を淹れているリトに「大人しく座っててよ」と言われたけれど、構わずに家の中を物色する。ペアの皿やグラス、リトの趣味じゃない装飾品。きっと寝巻きなんかもおそろいなんだろう、なんて想像を巡らせてしまう。
こうしていると、たまに会っているはずなのにオレの知っているリトは随分遠くへ行ってしまった気がする。オレの知らないリトがどこかにいるってだけでどうしようもなくイラついて同時に物寂しい気持ちになる。
リトが幸せならそれでいいんじゃなかったん?と自分に言いきかせてみても、本能は理論なんかで動かされるはずがなかった。こうしてロシアの目を盗んでここにいる事実だけでもそれはわかる。
もっとも、リトはそんな考えをオレが持っているなんて夢にも思わないだろう。今までだって別に仲良く幼なじみをしていたわけじゃない。それなりの関係にもなった事はあるけれど、少なくとも今のリトはオレよりあいつを選んでるわけで…つまりオレは周りから見ればただのリトの幼なじみでしかない。
…なぁ、それって何なん?
こんなに苦しいのにリトの隣にいられるこの立場も捨てられん。中途半端な自分に嫌気がさす。
「ポー、どうかしたの?」
考え込むオレをリトは不思議そうに眺めた。本当は「今日は何しに来たの?」って言いたいのかもしれない。
「リト、こっち来るしー」
オレは自分の座っているソファーの隣をポンポン叩いて笑った。
「…どうしたの?」
リトは何の警戒心もなく隣に座った。まぁオレがTPOに関係なくリトにじゃれるのはいつもの事だから、きっといきなり押し倒してもふざけているとしか思わないに違いない。
「…リト」
「え、ちょっ…」
リトの言葉を塞ぐようにキスをしてそのままソファーにくずれ込む。無用心なリトは、大した抵抗もないままいとも簡単にオレに押し倒された。
「…ふ、ぁ……何ポー、どうしたの…?」
長いキスから解放されてリトはそう口にした。
オレを見上げる潤んだ瞳が困惑を物語っている。どうしてこんな目に遭っているのか、これからオレがどうしたいのかも本当にわかっていないようだった。
…オレはリトにとって今もただの親友なんだろうか。こんなにも意識されない程に。
そう思うと、この状況をどうしてもリトにわからせてやりたくなった。今ならふざけただけだと言い訳もできる。引くなら今だ。でももうそんな気はかけらもなかった。
「ポー?」
黙り込んだまま押さえつけた手に力を込めると、ようやく不安を帯びた声でリトがオレの名を呼ぶ。
構わずにオレはリトに馬乗りになった状態で首筋に舌を這わせた。
「ん…や、っあ……ポー…どうし……」
オレに気があってもなくても、体は素直に反応する。それに少しだけ救われた気がした。
「どうして…?こんな事しとるんよ?!リトの事好きだからに決まっとるし。」
「でも……」
好きだからって一方的にこんな事していいわけない事くらいわかってる。
でもリトが本気で抵抗すれば振り切れるはずなんよ。そうしないって事はリトは少しはオレの事好きでいてくれるって思っていいん…?
だからあえて本気で嫌がる素振りを見せないリトのほんの少しの好意にオレは甘えた。


「ど…して……こんな事…」
行為が終わってリトは目を合わさずにそう呟いた。
「…やりたかったんよ。べつにいいやん、リトだってちゃんと感じとったし。」
当たり前だ。知り尽くした身体を満足させることなんて難しいことじゃない。そうする事でオレはリトを共犯者に仕立てた。
「でも…オレ、ロシアさんに……」
「言わなきゃ大丈夫じゃね?別にオレはお前らに別れろって言っとるわけじゃないんよ」
リトがこういう事を良く思っていない事も、これからもこんな関係を続けられる性格じゃない事もわかっている。
だからこそ、「無かった事」にすればいい。そうほのめかしてもリトは納得いかないようだった。
それでも「親友だと思っていたのに」という類の事は一切言われなかった。それがこういう関係になるのが初めてじゃないからなのか、今でもオレの事を気にしてくれていたからなのかはわからない。
けれどそれはオレにとって幸運なことではなかった。結局選ばれたのはオレではないのだから。

互いに何事もなかったかのように衣服を整えて気まずい沈黙が流れる。
それを破ったのはオレでもリトでもなく、ロシアだった。
インターホンの音にリトはとても動揺していた。そりゃあオレだってわざわざロシアと鉢合わせしたくなくて別の時間に訪ねたくらいだから、できれば顔を合わせたくない。
「と、とりあえずここに隠れてて!」
リトにそう言われて押し込まれたのは寝室のクローゼットだった。
別にオレはお互い不機嫌になるけれど会ったって構わなかった。こんな風に隠れていると、顔を出せないオレはやっぱりこの空間では異質な存在で、いてはいけないのだと思い知らされる。
リトに隠された時点でオレはここにきてはいけなかったのかもしれない。オレはリトにとってロシアの前では隠さなければいけない存在だった。


「ねぇ、誰か来ていたの?」
「あ…ちょっとポーが……」
リトはそこまで言ってはっと口を閉じた。
バカ正直に答えてればいいってもんじゃない。これでオレの存在はロシアに気付かれてしまった
。たぶん、ロシアはティーカップを見て来客に気付いたわけじゃない。それよりももっと早く、きっと帰ってきた瞬間にばれていたに違いない。根拠はないけどそんな気がした。

それから見た光景はあまりよく覚えていない。いや、ある意味部分的には鮮明に記憶に残っている。けれどそれを受け入れたくない自分がいて、なかった事にしたいだけなんだろう。

だってオレの目の前でロシアがリトを抱いた。
クローゼットの隙間から見てるだけのオレは一体何なん?これじゃあまるでオレが間男みたいじゃね?クローゼットを出てロシアにそれを咎めることができなかった。隠されてる自分の方が悪い事をしているような気すらした。
でもオレが動けなかったのはオレの立場のせいじゃない。一番の理由はリトがそれを受け入れていた事。そしてその事実をロシアに見せ付けられた事。
オレの見たことのないリトの表情とか聞いたことのない声とか。全部、最初からオレの入る余地なんかどこにもないのだと嫌になる程思い知らされた。
リトは優しいから、オレを傷つけたくなくてオレを拒みきれなかったんだろう。その優しさに甘えて罪悪感すら覚えたのに、結局一番残酷なのはリトなのだ。そんな逆恨みに近い矛盾した想いを抱えても、オレはリトを責める気にはなれなかった。
…オレがリトと一緒に過ごした時期とリトがあいつと過ごした時期と何が違うん?
いろんな事がぐるぐると頭の中を回る。答えなんか出ないってわかっとるのに。
違う。今オレが考える事はリトの気持ちでも自分の気持ちを整理することでもない。
見えるのはロシアのいなくなった寝室とベッドに横たわるリト。
ああ、オレはこれからどんな顔してリトと話せばいい?なんてリトに声をかけたらいいん?リトはオレにどんな態度をとるん?
こんなことなら、あいつに…ロシアに絶対奪われることのない親友という立場を守っていればよかった。一方的に気持ちをぶつけなければよかった。リトがはっきりと拒んでくれたらよかった。
でもきっと言わずにはいられなかったんよ…オレはそういう性格やから。
だから今、後悔するのはおかしい。オレは、反省はするけど後悔はしたくない。そう思ってずっとやってきたのに。

きっとこれからオレは名前を呼ばれる。ポー、大丈夫?って、自分が大丈夫じゃないくせにあいつはきっとオレを気にかける。
もしそう言われたなら…そしたらオレはちゃんとそれに応えてやろう。いつもの、お前の知ってる「幼なじみのポーランド」を最高の笑顔つきで演じてみせるし。
…だからリト、早くオレの名前を呼ぶんよ?そしたらオレはこれから先ずっと、お前だけのポーでいてやるから。



   fin.

***
一周年リクエスト企画でこぱん様にリクいただ「新妻リト(露立+波立)」です。
新妻なんて表記が皆無ですが…そしてとっても遅くなってすみません。
リクエストありがとうございました!

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