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「アメリカさん、お誕生日おめでとうございます!!」
「リトアニア…わざわざ来てくれたのかい?」
7月4日、アメリカさんを驚かせたくてオレはアポも取らずにやって来た。
「はい。せっかくアメリカさんの誕生日なので2日ほど休みをとったんです。」
「本当かい?嬉しいよ!君とゆっくりできるなんて久しぶりなんだぞ。」
アメリカさんは喜んでくれたけれど、その表情にどこか曇りがあったような気がした。今も出かける用意をしていたらしく、スーツを着込んでいる。アメリカさんの誕生日は毎年いろんな人がお祝いに来るから、もしかしたらオレが思っているよりも忙しいのかもしれない。
「はい。オレもとっても楽しみです…!」
アメリカさんに合わせてそう返したけれど、少し不安になってきた。でもせっかくトニーたちにも会えるのに暗くなってても仕方がない。
「あの…オレ夕飯でも作りますね!」
「ああ、楽しみにしているよ。オレはこれから少し仕事だけど…夜には帰るから。」
「はい。待ってますね。」
アメリカさんはオレに軽くキスをすると、「それじゃ行ってくるよ。」と言って家を出て行った。
まだ夜まで時間があるから、少し部屋を片付けてから夕飯を作ろうと思ってオレはリビングに散乱している書類や新聞を片付け始めた。オレがアメリカさんの家に出稼ぎに来た時もひどかったけど、今はそれにも増してすごい散らかり様だ。それでも一時間程である程度片付いたので、拾い集めたメモを整理して買い物に出かけようかなと思った時だった。
「あれ…」
一番上に置いたメモが目に付いた。
その走り書きされた内容を見るつもりはなかったのだけど、偶然見てしまった内容が頭から離れず心がざわめく。
そのメモではアメリカさんは今夜にイギリスさんと会う事になっていた。
もしかしたらその予定は早々に変更になったのかもしれないし、仕事で会うだけなのかもしれない。忙しいからといって予定を忘れたりする人ではないから、散らかしたメモであってもきっと把握しているだろう。それになによりさっきアメリカさんはオレに何も言わなかった。君とゆっくりできるなんて久しぶりだと笑ってくれたし、オレの作る夕飯を楽しみにしていると言ってくれた。…だったらオレのする事はひとつしかないじゃないか。アメリカさんを信じて夕飯を作って待っていればいい。あんなメモひとつで不安になるなんてどうかしている。
それでもその気持ちを完全に拭い去ることはできずに、オレは買い物に出かけて夕飯の準備を始めた。
料理をする手つきがいつもと違って妙にぎこちない。理由はわかりきっている。
本当にばかみたいだ。本来ならきっとうきうきしながら料理していたはずなのに、今はため息しか出てこない。お祝いに来たのにこんな気持ちじゃだめだと思うけれど、アメリカさんが帰ってきてくれなきゃこの不安は消えそうにない。早く帰ってきてほしい。こんなに帰りが待ち遠しかったことは今までなかったのに…。
そんなことを思いながら夕食の準備を終えてリビングのソファーに座っていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
アメリカさんならチャイムなんて鳴らさないだろうから来客だろうか。オレは急いで玄関を開けた。すっかり外が暗くなっているのに玄関の灯りもつけていなかったことに気付いて、慌ててスイッチを入れる。ドアを開けると、そこにいたのはアメリカさんだった。
「アメリカさん…」
アメリカさんの顔を見た瞬間、全身の力が抜ける気がした。
「ただいま、リトアニア。家が真っ暗だったから気になってチャイムを鳴らしてみたんだけど…どうかしたのかい?」
「あ…いえ、お帰りなさい」
「オレがいない間に何かあったのかい?顔色がよくないみたいだけど…」
そう言ってアメリカさんはそっとオレの頬に触れて笑いかける。
「せっかくうちに来たんだから無理することないんだぞ。」
「はい、大丈夫です。…夕飯できてますよ、すぐ食べますか?」
つられて笑いながら、オレはアメリカさんの鞄を受け取り一緒に廊下を歩く。
「ああ、何も食べてないからお腹ぺこぺこだよ。君の手料理久しぶりだから、早く食べたいなあって仕事中もずっと考えてたんだぞ!」
「ちゃんと仕事してくださいよ…」
口ではそう言いながら笑ったけれど、悪い気はしない。その言葉がお世辞だったとしても、オレを気遣ってくれるこの人の優しさが好きだ。些細な事だけれど、離れていてもちゃんとオレの事を想っていてくれると自惚れてしまうくらいに嬉しくてたまらない。「夕飯、すぐに用意しますね」
鞄をアメリカさんの部屋まで運んでからオレは再びキッチンに戻り、作った料理を温め始める。
軽くシャワーを浴びたアメリカさんがテーブルにつく頃にはすっかり食事の仕度は整っていた。アメリカさんは相当お腹が空いていたのか、まだ食べてもいないのにオレの料理を褒めてくれた。
「どうぞ、召し上がってください。」
オレがそう言うのと同時くらいに「いただきます!」と元気な声が上がる。
そんなアメリカさんを見ていると、やっぱりここに来て良かったなぁと感じる。普段中々会えないことを思えば、こんな空間を共有していられるのはとてもかけがえのないことだし、同じ食事をしていても一人で食べるのとは全然美味しさが違う。アメリカさんもそんな風に思っていてくれたらいいのに、と思いながらあっという間に空になった器を見てオレはおかわりを勧める。
「アメリカさん、あの…」
「何だい?」
おかわりしたスープを渡しながら、意を決してオレは拭えない不安を口にした。
「今日…イギリスさんと約束があったんじゃないですか?」
「……あのメモ…見たのかい?」
オレの言葉を聞いた瞬間、アメリカさんの周りの空気が凍りつく。
「すみません、偶然目について…」
「…勝手に見るなんてひどいじゃないか!それに…そんな事君には関係ないだろう!?」
吐き捨てるように言うと、アメリカさんは席を立って部屋に行ってしまった。
「あ……」
やっぱり言うんじゃなかった。たとえ不安だったとしても、オレが心の内に飲み込んで我慢していればこんなことにはならなかったのに。
怒らせてしまった。激しい後悔が胸を渦巻く。
「……っ」
声を詰まらせて、握り締めた掌にさらに力を込める。
もうイギリスさんと何があったかはどうでもよくて、ただ、楽しく過ごそうとアメリカさんも努力してくれていたはずなのに、そんな雰囲気を自分で壊してしまった事がとても腹立たしかった。
本当に何しに来たんだろう、オレ。これじゃアメリカさんを不愉快にさせただけで、ちっともお祝いになってないじゃないか。
とにかく早く謝りたくて、オレはアメリカさんの部屋へ急ぐ。
部屋の前まで来ても、ドアをノックして開ける勇気が出ずに、オレは仕方なくその場で静かに話しかけた。
「アメリカさん…さっきはすみませんでした。迷惑ならすぐに帰るので、あの……」
最期のあたりは声が震えて言葉にならなかった。涙がどんどん溢れて止まらない。
アメリカさんからは何の反応もない。ああやっぱり怒っているんだと思ってオレがリビングへ戻ろうとした時、ゆっくりとアメリカさんの部屋のドアが開いた。
「リトアニア…ごめん。あんな風に言うつもりじゃなかったんだ。最近優しくする余裕がなくて……」
中から現れたのはいつもの陽気なアメリカさんではなかった。もしかしたら彼も泣いていたのかもしれない。それくらい沈んだ表情だった。
「…知ってます。色々忙しいのに突然オレが押しかけたから……すみません、オレが悪いんです。」
次の瞬間、そんなことはない、と言わんばかりにアメリカさんはオレを思い切り抱きしめてきた。
「本当にごめん!!」
「…アメリカさん?」
「君の前ではヒーローのように振舞っていたいのに…こんなんじゃホントみっともないな。……幻滅したかい?」
思いがけない展開についていけずに戸惑っていると、アメリカさんがそうこぼした。「幻滅なんて、そんな…」
「君のことを大切に思っているのに、あんな事言って……わざわざ来てくれたのにごめんよ。」
…何を言っているのだろう。オレが勝手に押し掛けてきただけなのに、オレの方が悪いのに、謝るのはオレの方なのに。
「アメリカさん…」
…ああ、オレはどうしようもなくこの人が好きだ。
いつの間にか涙は止まっていて、さっきまでの心細い気持ちはもうどこにもない。オレは瞳を閉じて一度だけ深呼吸すると、アメリカさんの背中に手を回した。
「いいんです。優しくなくたって、みっともなくたって、オレはアメリカさんの事が好きですよ?……あなたがいいんです。」
「オレを許してくれるのかい?」
「そんなの…オレの科白ですよ。アメリカさんの事ならオレは最初から全部許してます。」
オレはアメリカさんを見上げると苦笑して答えた。
「オレもだよ、リトアニア」
いつもこんな風にアメリカさんはオレに笑顔をくれる。本当に太陽のような人だ。
会いたい時に会えなくてもどこかで繋がっていると信じられるのは、ひとえにこの笑顔のおかげだ。
「アメリカさん…誕生日おめでとうございます。」
こんな事になってしまったけれど、やっぱり今日はオレにとっても特別な日だから、何度でもそう言いたかった。
「ありがとう。君がそばにいてくれて…本当に今日は最高の誕生日だよ!」
「そんな事…」
こんな事をさらっと言われるととても気恥ずかしいけれど、それでもそう思ってもらえる事はやっぱり嬉しくて、オレは抱きしめ返す腕に力を込める。
「リトアニア?」
不思議そうにオレを見下ろすアメリカさんにオレは言った。
「あの…誕生日ケーキも作ったんです、後で食べてくれますか?」
「そんなの当たり前じゃないか!ありがとう、嬉しいよ!!」
こんな事くらいしかオレはできないけれど、アメリカさんはとても喜んでくれた。嬉しいのはオレの方だ。
「…アメリカさん?」
穏やかに見つめるその視線が気になって、名前を呼びかける。
「いつもそばにいられなくてごめん。でもオレは君の事が大好きなんだぞ、リトアニア。」
「あ、ありがとうございます。オレも…アメリカさんの事、大好きです。」
オレたちは互いにそう告白すると、どちらからともなく笑い合った。
好きだよ、と言ってくれる。力強く抱きしめてくれる。それはとっても幸せな事で、これ以上なんて贅沢すぎて求められない気がする。
少年のように顔をほころばせるこの人は、きっといつもオレと同じ事を思っていてくれるのだろう。
そして優しいキスをして、「ところでリトアニア、食事の続きをしないかい?」とオレに囁くに違いない。
fin.
***
アメリカ誕生日SS(2099)。「HAPPY BIRTHDAY For July」に投稿したものです。
「リトアニア…わざわざ来てくれたのかい?」
7月4日、アメリカさんを驚かせたくてオレはアポも取らずにやって来た。
「はい。せっかくアメリカさんの誕生日なので2日ほど休みをとったんです。」
「本当かい?嬉しいよ!君とゆっくりできるなんて久しぶりなんだぞ。」
アメリカさんは喜んでくれたけれど、その表情にどこか曇りがあったような気がした。今も出かける用意をしていたらしく、スーツを着込んでいる。アメリカさんの誕生日は毎年いろんな人がお祝いに来るから、もしかしたらオレが思っているよりも忙しいのかもしれない。
「はい。オレもとっても楽しみです…!」
アメリカさんに合わせてそう返したけれど、少し不安になってきた。でもせっかくトニーたちにも会えるのに暗くなってても仕方がない。
「あの…オレ夕飯でも作りますね!」
「ああ、楽しみにしているよ。オレはこれから少し仕事だけど…夜には帰るから。」
「はい。待ってますね。」
アメリカさんはオレに軽くキスをすると、「それじゃ行ってくるよ。」と言って家を出て行った。
まだ夜まで時間があるから、少し部屋を片付けてから夕飯を作ろうと思ってオレはリビングに散乱している書類や新聞を片付け始めた。オレがアメリカさんの家に出稼ぎに来た時もひどかったけど、今はそれにも増してすごい散らかり様だ。それでも一時間程である程度片付いたので、拾い集めたメモを整理して買い物に出かけようかなと思った時だった。
「あれ…」
一番上に置いたメモが目に付いた。
その走り書きされた内容を見るつもりはなかったのだけど、偶然見てしまった内容が頭から離れず心がざわめく。
そのメモではアメリカさんは今夜にイギリスさんと会う事になっていた。
もしかしたらその予定は早々に変更になったのかもしれないし、仕事で会うだけなのかもしれない。忙しいからといって予定を忘れたりする人ではないから、散らかしたメモであってもきっと把握しているだろう。それになによりさっきアメリカさんはオレに何も言わなかった。君とゆっくりできるなんて久しぶりだと笑ってくれたし、オレの作る夕飯を楽しみにしていると言ってくれた。…だったらオレのする事はひとつしかないじゃないか。アメリカさんを信じて夕飯を作って待っていればいい。あんなメモひとつで不安になるなんてどうかしている。
それでもその気持ちを完全に拭い去ることはできずに、オレは買い物に出かけて夕飯の準備を始めた。
料理をする手つきがいつもと違って妙にぎこちない。理由はわかりきっている。
本当にばかみたいだ。本来ならきっとうきうきしながら料理していたはずなのに、今はため息しか出てこない。お祝いに来たのにこんな気持ちじゃだめだと思うけれど、アメリカさんが帰ってきてくれなきゃこの不安は消えそうにない。早く帰ってきてほしい。こんなに帰りが待ち遠しかったことは今までなかったのに…。
そんなことを思いながら夕食の準備を終えてリビングのソファーに座っていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
アメリカさんならチャイムなんて鳴らさないだろうから来客だろうか。オレは急いで玄関を開けた。すっかり外が暗くなっているのに玄関の灯りもつけていなかったことに気付いて、慌ててスイッチを入れる。ドアを開けると、そこにいたのはアメリカさんだった。
「アメリカさん…」
アメリカさんの顔を見た瞬間、全身の力が抜ける気がした。
「ただいま、リトアニア。家が真っ暗だったから気になってチャイムを鳴らしてみたんだけど…どうかしたのかい?」
「あ…いえ、お帰りなさい」
「オレがいない間に何かあったのかい?顔色がよくないみたいだけど…」
そう言ってアメリカさんはそっとオレの頬に触れて笑いかける。
「せっかくうちに来たんだから無理することないんだぞ。」
「はい、大丈夫です。…夕飯できてますよ、すぐ食べますか?」
つられて笑いながら、オレはアメリカさんの鞄を受け取り一緒に廊下を歩く。
「ああ、何も食べてないからお腹ぺこぺこだよ。君の手料理久しぶりだから、早く食べたいなあって仕事中もずっと考えてたんだぞ!」
「ちゃんと仕事してくださいよ…」
口ではそう言いながら笑ったけれど、悪い気はしない。その言葉がお世辞だったとしても、オレを気遣ってくれるこの人の優しさが好きだ。些細な事だけれど、離れていてもちゃんとオレの事を想っていてくれると自惚れてしまうくらいに嬉しくてたまらない。「夕飯、すぐに用意しますね」
鞄をアメリカさんの部屋まで運んでからオレは再びキッチンに戻り、作った料理を温め始める。
軽くシャワーを浴びたアメリカさんがテーブルにつく頃にはすっかり食事の仕度は整っていた。アメリカさんは相当お腹が空いていたのか、まだ食べてもいないのにオレの料理を褒めてくれた。
「どうぞ、召し上がってください。」
オレがそう言うのと同時くらいに「いただきます!」と元気な声が上がる。
そんなアメリカさんを見ていると、やっぱりここに来て良かったなぁと感じる。普段中々会えないことを思えば、こんな空間を共有していられるのはとてもかけがえのないことだし、同じ食事をしていても一人で食べるのとは全然美味しさが違う。アメリカさんもそんな風に思っていてくれたらいいのに、と思いながらあっという間に空になった器を見てオレはおかわりを勧める。
「アメリカさん、あの…」
「何だい?」
おかわりしたスープを渡しながら、意を決してオレは拭えない不安を口にした。
「今日…イギリスさんと約束があったんじゃないですか?」
「……あのメモ…見たのかい?」
オレの言葉を聞いた瞬間、アメリカさんの周りの空気が凍りつく。
「すみません、偶然目について…」
「…勝手に見るなんてひどいじゃないか!それに…そんな事君には関係ないだろう!?」
吐き捨てるように言うと、アメリカさんは席を立って部屋に行ってしまった。
「あ……」
やっぱり言うんじゃなかった。たとえ不安だったとしても、オレが心の内に飲み込んで我慢していればこんなことにはならなかったのに。
怒らせてしまった。激しい後悔が胸を渦巻く。
「……っ」
声を詰まらせて、握り締めた掌にさらに力を込める。
もうイギリスさんと何があったかはどうでもよくて、ただ、楽しく過ごそうとアメリカさんも努力してくれていたはずなのに、そんな雰囲気を自分で壊してしまった事がとても腹立たしかった。
本当に何しに来たんだろう、オレ。これじゃアメリカさんを不愉快にさせただけで、ちっともお祝いになってないじゃないか。
とにかく早く謝りたくて、オレはアメリカさんの部屋へ急ぐ。
部屋の前まで来ても、ドアをノックして開ける勇気が出ずに、オレは仕方なくその場で静かに話しかけた。
「アメリカさん…さっきはすみませんでした。迷惑ならすぐに帰るので、あの……」
最期のあたりは声が震えて言葉にならなかった。涙がどんどん溢れて止まらない。
アメリカさんからは何の反応もない。ああやっぱり怒っているんだと思ってオレがリビングへ戻ろうとした時、ゆっくりとアメリカさんの部屋のドアが開いた。
「リトアニア…ごめん。あんな風に言うつもりじゃなかったんだ。最近優しくする余裕がなくて……」
中から現れたのはいつもの陽気なアメリカさんではなかった。もしかしたら彼も泣いていたのかもしれない。それくらい沈んだ表情だった。
「…知ってます。色々忙しいのに突然オレが押しかけたから……すみません、オレが悪いんです。」
次の瞬間、そんなことはない、と言わんばかりにアメリカさんはオレを思い切り抱きしめてきた。
「本当にごめん!!」
「…アメリカさん?」
「君の前ではヒーローのように振舞っていたいのに…こんなんじゃホントみっともないな。……幻滅したかい?」
思いがけない展開についていけずに戸惑っていると、アメリカさんがそうこぼした。「幻滅なんて、そんな…」
「君のことを大切に思っているのに、あんな事言って……わざわざ来てくれたのにごめんよ。」
…何を言っているのだろう。オレが勝手に押し掛けてきただけなのに、オレの方が悪いのに、謝るのはオレの方なのに。
「アメリカさん…」
…ああ、オレはどうしようもなくこの人が好きだ。
いつの間にか涙は止まっていて、さっきまでの心細い気持ちはもうどこにもない。オレは瞳を閉じて一度だけ深呼吸すると、アメリカさんの背中に手を回した。
「いいんです。優しくなくたって、みっともなくたって、オレはアメリカさんの事が好きですよ?……あなたがいいんです。」
「オレを許してくれるのかい?」
「そんなの…オレの科白ですよ。アメリカさんの事ならオレは最初から全部許してます。」
オレはアメリカさんを見上げると苦笑して答えた。
「オレもだよ、リトアニア」
いつもこんな風にアメリカさんはオレに笑顔をくれる。本当に太陽のような人だ。
会いたい時に会えなくてもどこかで繋がっていると信じられるのは、ひとえにこの笑顔のおかげだ。
「アメリカさん…誕生日おめでとうございます。」
こんな事になってしまったけれど、やっぱり今日はオレにとっても特別な日だから、何度でもそう言いたかった。
「ありがとう。君がそばにいてくれて…本当に今日は最高の誕生日だよ!」
「そんな事…」
こんな事をさらっと言われるととても気恥ずかしいけれど、それでもそう思ってもらえる事はやっぱり嬉しくて、オレは抱きしめ返す腕に力を込める。
「リトアニア?」
不思議そうにオレを見下ろすアメリカさんにオレは言った。
「あの…誕生日ケーキも作ったんです、後で食べてくれますか?」
「そんなの当たり前じゃないか!ありがとう、嬉しいよ!!」
こんな事くらいしかオレはできないけれど、アメリカさんはとても喜んでくれた。嬉しいのはオレの方だ。
「…アメリカさん?」
穏やかに見つめるその視線が気になって、名前を呼びかける。
「いつもそばにいられなくてごめん。でもオレは君の事が大好きなんだぞ、リトアニア。」
「あ、ありがとうございます。オレも…アメリカさんの事、大好きです。」
オレたちは互いにそう告白すると、どちらからともなく笑い合った。
好きだよ、と言ってくれる。力強く抱きしめてくれる。それはとっても幸せな事で、これ以上なんて贅沢すぎて求められない気がする。
少年のように顔をほころばせるこの人は、きっといつもオレと同じ事を思っていてくれるのだろう。
そして優しいキスをして、「ところでリトアニア、食事の続きをしないかい?」とオレに囁くに違いない。
fin.
***
アメリカ誕生日SS(2099)。「HAPPY BIRTHDAY For July」に投稿したものです。
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