忍者ブログ
≪二次創作倉庫≫PC閲覧推奨
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



愛のないその行為は無責任に楽しめていいと思っていた。
それが心苦しいと感じるようになったのはいつからだろうか。


***


「ごめん、リト。オレちょっと用事できたから…今日の泊りなしな。」
リトアニアの家に着いて早々、ポーランドは言った。その言葉をきいて、おそらくさっき話していた携帯電話の相手から呼び出されたのだろう、とリトアニアは思った。
「え…ポー、どうしたの。今日の休みとるって最近あんなに頑張ってたのに…また仕事なの?」
その日、ポーランドはやっともぎとった久しぶりの休日をリトアニアの家で堪能する予定だった。リトアニアもそれを知っているので、怪訝そうな顔をする。
「ん~…仕事じゃなくて私用なんやけど。ちょっと深刻みたいやから…マジごめんな。」
そう言ってポーランドは心苦しそうな表情を見せた。
「ポー…?」
ポーランドの表情に後ろめたさが感じられるのは滅多にない事なので、長年の付き合いからそれが緊急事態なのだということはリトアニアにもわかった。
「あとで連絡するし」
リトアニアの耳元でそう囁いて頬にキスをすると、ポーランドはすぐにリトアニアの家を出た。
「え、ちょっと…ポー!!……もう…料理二人分もどうすればいいの……オレだって楽しみにしていたのに…」
キスされた頬を押さえながら一人玄関に取り残されたリトアニアはそう呟いた。乱された気持ちと成り行きに割り切れない気持ちを抱えつつも、幼なじみの行動を理解しようと努めた。


***


「ごめんなさい…出かけていたんでしょう?用事があったんじゃ…」
ポーランドを出迎えたウクライナはタオルを差し出しながら申し訳なさそうに言った。ウクライナに呼び出されて直行したポーランドは、先刻降り出した雨でずぶ濡れだった。
「オレの事なんて別に気にせんでいいんよ。」
タオルを受け取り、顔や頭を拭きながら、何事もなかったかのようにポーランドは笑う。
風邪をひくから、とそんなポーランドにウクライナはひとまずシャワーを勧めた。

シャワーを浴びたポーランドが濡れた髪を乾かしている間に、ウクライナは熱い紅茶を淹れるとリビングのテーブルにカップを二つ並べた。
「…そういえばどうしたん、急に会いたいって…」
カップに注がれた紅茶を口から半分身流し込むと、ポーランドは話を切り出した。
隣に座っていたウクライナの顔色がわずかに曇る。
「…あ、あの……っ…」
ウクライナは言いよどみながら、ポーランドの様子を伺うようにゆっくりと目を向ける。
「…ひとりになりたくなかったの…」
「……」
ウクライナが泣くのではないかとポーランドは思った。ポーランドにとってウクライナの望みは意外だったが、顔には出さずに平静を装う。
「ごめんなさい、突然…こんなくだらない事で呼び出して……」
「…別に構わんけど…」
何があったのかはきくまい、とポーランドは思いながらウクライナの言葉を待った。
しばらくしてウクライナは目を伏せて身体をポーランドの方へもたれるように傾けた。
「…ライナ?」
ポーランドが不思議そうに言うのとほぼ同時に、ウクライナはポーランドの背中に腕をまわす。
一瞬誘惑されているような感覚にポーランドは陥ったが、それもあながち間違いではなかった。
ウクライナはそのまま顔を上げて抱き寄せるようにキスをする。
舌を絡める本気のキス。それはとても珍しいことだった。
「…ごめんなさい」
一旦ポーランドから離れ、呟くようにそう言ったウクライナは震える両手で自分自身を抱きしめた。
「謝らんでもいいんよ。…大丈夫なん?」
そんなウクライナを見ても具体的な慰めの言葉が浮ばず、ポーランドはそう返すので精一杯だった。
「…何も考えたくない……少しでいいの、全部…忘れたいの。」
消え入るような声でウクライナはやっとそう言うと、縋るようにポーランドを見つめ、数滴の涙をこぼした。
ポーランドは妙な罪悪感に駆られ、心拍数が上がるのを感じた。
どうしてこの小さな肩をすぐに抱き寄せる事ができないのか。それが幼なじみを裏切られない後ろめたさからくるものだとわかってはいるけれど、それは目の前のウクライナには何の関係もない事だ。
そう、一番悪いのは誰にでもいい顔をしている自分だと痛いくらいにわかっているのに。
それでもポーランドはウクライナから目をそらす事ができずに仕方なく目を閉じる。
そして自身を落ち着かせるために小さく息を吐くと、ポーランドはゆっくりと口を開いた。
「ん……ええよ。ライナ以外は何も見えんでも、今だけは…」
ポーランドが静かに微笑んで両腕を広げると、ウクライナは吸い寄せられるようにその腕の中に身を寄せる。
「あ、ポーランド…」
めちゃくちゃに抱こう、とポーランドは思っていた。お互いの頭が真っ白になって何も考えられなくなるくらいに。ポーランドにはそれくらいしか今のウクライナにしてやれる事がなかった。
「あの…」
「…何も考えられんようにしてやるし。」
戸惑うその声を宥めると、ポーランドはしがみつくばかりのウクライナをできるだけ乱暴に抱いた。
「あ…っ、ポーランド……や…ぁ……っ…」
ポーランドから与えられる官能的な刺激に、ウクライナはすぐに堪えきれない嬌声を迸らせた。


***


「ごめんなさい…」
行為が一通り終っても二人は眠れなかった。
落ち着きを取り戻したウクライナは、それでも何があったのかを言えずにいた。
「ライナ、今日は謝ってばかりやね。…気にせんでええって言っとるのに。」
穏やかな声でそう言ってウクライナに目をやると、その目元にはうっすらとまた涙が滲んでいるのがポーランドには見てとれた。
「でも…」
「…泣きたかったら泣けばいいんよ。目が覚めるまで傍におるし。」
「ん…」
ポーランドは優しくウクライナを抱き寄せると、眠りにつくまで見守ることにした。


…はっきりしない自分が一番酷いって事くらいはわかってるんよ。
ウクライナを選ぶわけでもないのに優しくするなんて、残酷な事だと頭ではわかっている。

もしかしたら無意識に甘えているだけなのかもしれない。それもいつか度を越すかもしれない事も予想はできる。
…それでもこの微かなぬくもりをお互い必要としている今だけは何も考えたくない。


ポーランドはため息混じりに苦笑すると、胸のつかえを無理矢理押し込めて、まどろみの中にいるウクライナの軟らかい髪をそっと撫でた。

―ライナ以外は何も見えんでも、今だけは……。

掌に残るこのわずかなぬくもりだけが今の二人を繋いでいるのだと、痛いくらいにポーランドは感じていた。



   fin.


拍手[0回]

PR
色々
ブログ内検索
カウンター
バーコード
アクセス解析
Admin / Write
忍者ブログ [PR]