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R18です。




「リト~!!」
ロシアさんの支配から解放されたオレに真っ先に会いに来てくれたのは、幼なじみのポーランドだった。

「どうしたのこんな朝早くから。え、ちょっと待っ…」
ポーランドは満面の笑みでオレに抱きついてきた。いや、抱きつくというよりはぶつかってきたという方が正しいのか。
とにかくオレは勢いよくぶつかってきた幼なじみに押し倒されるような形で玄関へ倒れこんだ。もちろんポーランドがオレをかばってくれるわけもなく、背中や後頭部を床に思いっきり打ち付ける。
「ったぁ…一体どうしたの、ポー」
少しはオレの事も考えてよね、と言おうとした時、ポーランドの顔が近づいてきていきなりオレの口を塞いだ。
「んんっ……って何すんの!」
あわててポーランドを引き離す。たぶんオレは耳まで真っ赤になってたと思う。
「へへ~、だってオレ一番にリトに会いたくてわざわざ朝早くから来たんだし。これくらいのご褒美があってもいいと思わん?」
いつもの不敵な笑みを浮かべて当然のように言う。
「一番?つい最近も会ったばかりでしょ。」
確かロシアさんの付き人として何かの会議で会ったはずだ。
「会ったけど…あれはリトは参加してなかったし。だからリトが久々に独立してちゃんと会うのは今日が初めてなんよ。」
それに…と続けて恥ずかしそうに俯く。
「リトに一番最初にオレが…おめでとうって…言いたかったんだし。」
そんな事を直接言うためだけに、自己中心的なポーランドがわざわざ朝早くからオレ所に来てくれたのか。いや、それだけって事はないだろうな、とオレは寝ぼけた頭で色々考えた。
「そっか、そうだね。…ありがとう、ポー」
また何か予想外の事をしでかすんだろうな~と考えながらも、素直にポーランドの気持ちが嬉しかった。
「当然だし!・・・それよりリト、何か元気ないけどどうしたん?」
ああ、今日のポーランドは鋭いな、と思った。
「ああ・・・とりあえず独立はしたけど、国内は全然落ち着いてないし、やらなきゃいけない事がたくさんあるから当分忙しいんだよ。」
「だったらオレが協力するし!」
苦笑いをするオレに、ポーランドは嬉しそうに言い放つ。
「うん、ありがとう。とりあえず立ち話もなんだから中に入りなよ。」
そう言ってオレはポーランドを家の中に招いた。

ポーランドがリビングのソファーに座りテレビを見ている間に、ポーランドの好きなフレーバーの紅茶を入れる。
「やっぱリトの入れた紅茶が1番美味しいし!」
ポーランドは相変わらずの笑顔。何だかホッとする。
こんなにゆっくりポーランドと過ごせる時間がまた来るなんて、夢みたいだ。
オレはどれくらいロシアさんの所にいたのだろう。
とりあえずあまりいい出来事が思い出せない。楽しかった事より、辛く、苦しい事の方がはるかに多く覚えている。

「何だか…こうしてポーランドとゆっくり話すのって久しぶりだね。」
オレはポーランドの向かいに座り、紅茶を飲みながら呟いた。
「うん、いつもロシアのと会う時しかリトと会えんかったし。マジあいつ邪魔だった~。」
ロシアさんの文句を言いながらケタケタと笑う。ポーランドの中ではそれはもう過去の出来事なのだと理解する。
オレの苦笑いに気付いたのか、ポーランドは笑うのを止めてオレを見つめる。
「…でもリト、これは夢じゃないんよ。」
ほんの一瞬、真顔ではっきりとポーランドは言った。
「こんな日が来るなんて。正直オレも夢みたいって思ったし。…だから確かめに来たんよ。」
いつの間にかポーランドの表情はいつもの不敵な笑顔に戻っていた。
「……」
オレは何も言えずに固まっているけど、構わずにポーランドは話を続けた。
「ここに来てもロシアはおらんし、リトにだけ会えたし…もうオレたちいつだって好きな時に誰にも遠慮せんで会えるんよ?……いつまであんなやつの所にいるん?リト。」
強気でオレに諭すリトだったが、ほんの少しだけ目元が濡れている。
「泣きながら言われたって…説得力ないよ、ポー。」
「リトだって…泣いてるくせに。」
震える声でそう言いながら、しばらくオレたちはお互い笑い合った。
自然とその笑いが静まった頃、急にポーランドが顔を近付けて上目使いでオレを見つめて言った。

「な?これくらいのご褒美があってもいいと思わん?」
そう言い終わるのとどっちが早かっただろう。ポーランドがもたれ掛かるようにオレの肩に手を回して抱きしめてきた。思わず反射的に抱き留める。
「ポーランド?」
ぎゅうっと交差させた腕に力を入れて、オレの胸に顔を埋める。
「…っと信じらんないし。リトなんよね?夢じゃ…ないんよね…?」
さっき自分で夢じゃないとはっきり言っていたくせに。
「ゆ、夢なんかじゃないよ。ほら、ここにいるから。」
オレはポーランドの頭を軽く撫でながら言った。
確かに一緒にいたのはもう随分昔の事だ。オレはほとんどロシアさんの所にいたし、ポーランドだってかなり苦労してる。お互いやる事は山積みだけど、もっとこの再会を喜んでもいいのかもしれない。
強がりで人見知りなポーランドが泣いている。こんなにオレの事考えてくれてたなんて。
「ポー、泣かないで。オレどうしたらいいのかわからなくなるよ…。」
「リト…?」
ゆっくりとポーランドが顔を上げる。明かりに金色の髪が透けて揺れていて綺麗だ。
見慣れた顔に大きな瞳が涙で潤んでいる。
オレが見とれていると、突然ニヤッとポーランドが笑った。オレが赤面してるのがばれたからだろう。
オレはいろいろと恥ずかしくなり、全身から力が抜けた。傍目から見ればポーランドに押し倒された形でオレたちはそのままソファーになだれ込んだ。
「…ったあ。ポー、大丈夫?」
「う…ん」
拍子抜けしたポーランドはオレを見てすぐに目を逸らす。
涙の痕がうっすらとその頬に残っている。泣かせた理由が自分にあるのを再確認して、情けなさと妙な罪悪感に襲われる。
その焦りを悟られたくなくてオレはポーランドを抱きしめた。
「リト、どうしたん?急に…」
「ご褒美、なんでしょ?」
ポーランドの言葉を遮るようにオレは言った。本当は顔を見られたくて抱きしめてるなんて言えない。
よりかかるポーランドの体重と温もりを感じても、まだ夢なんじゃないかという錯覚が拭えない。ここに、いるのに。
「リト」
ポーランドは上体を起こしてオレと同じ高さまで顔を近づける。
オレの頬に軽く唇が触れるくらい近付くと、ふっと大人っぽい笑を浮かべる。
「こんなに…近くにおるのに」
そう呟くだけでキスはしてこない。
これはオレを挑発してるんだってわかってる。ポーランドはオレの目の前に自分というエサをぶら下げて首に腕を絡める。
「…もしかして、誘ってる?」
何かの意図を感じて、オレはポーランドと目を合わせないようにしながら尋ねる。
「ご褒美…くれるんよね?」
ポーランドはわざとオレの視線の先に顔を近付けて要求する。
オレが昔からそういう態度に逆らえないってわかってるくせに。今更本の調子に戻るなんて卑怯だ。
そう思いながら口づけると、ポーランドは満足したのか、オレに応えるように舌を絡めてきた。



ぴちゃぴちゃと濡れた音がリビング中に響く。
「んっ…」
頬を朱に染めて、時折見せる恍惚とした表情にドキっとする。そんなポーランド相手にどこまで理性が持つだろうか。
「…っ、はぁ…っ」
オレがゆっくりと唇を離すと、飲みきれなかった唾液がポーランドの顎を伝う。こんなに色っぽいポーランドは今まで見た事がない。オレは酸欠気味でぼうっとしているポーランドを再び抱き寄せ、耳朶や首筋に舌を這わせた。同時に片手でシャツの釦に手をかけていく。
「はっ…ん、あぁっ…」
虚ろな瞳、扇状的な媚態。もっと乱れる姿が見たくて丹念に愛撫する。
しばらくしてオレはポーランドをソファーに寝かせて自分の髪の毛を後ろでひとつに結んだ。
ソファーに寄り掛かり、ポーランドの額に軽く口付けをする。片方の手はゆっくりとポーランドの下腹部へ伸びてゆく。
「あっ……!リト…っ」
かすかに聞こえたその声さえも耳朶を灼いていく。
掌でそこを撫で回し、今度はそこに唇を落とす。
舌先で先端をくすぐり、指先は快楽を擦りあげる。
「あ、リト…、ダメ…んんっ…」
押し殺した声が漏れ、限界が近い事を教える。
「いいよ、ポーランド。一回イッて…」
そう言ってオレは愛撫の動きを早めた。
「あ…やっ……んっ、ああっ…っ!」
その嬌声と同時に、びくんとポーランドの身体が大きく跳ね、自身を開放した。


オレはソファーに俯せになって息を整えるポーランドの髪を撫でる。
「…っ、は…っ……」
「ポー、大丈夫?」
「…い、…」
「え、何?」
「リトってば…ズルイ。」
顔だけを上げて得意の上目使いでオレを見つめる。
「ズルイって何が?」
「だって……何か上手かったし」
…恥ずかしすぎる。そんな事ホントでもウソでも言わないでほしい。こんなんじゃポーランドと目を合わせられない。
「さ、誘ったのはポーでしょ。それにオレ、サービス精神旺盛だから…」
挙動不審気味に言う。あ…何か苦しいな、この言い訳。

「うー…」
反論できないポーランドが低く唸る。
「じゃあオレもサービスするし!」
唐突に宣言してポーランドはオレの服に手をかける。
「え、ちょっ…いいよ別に。…っ、ポーランド!!」
問答無用で本能のままに攻め立ててくる。しかもかなり直接的だ。
こんな状態のポーランドには何を言っても無駄だ。
わかってるけど、抗議の声を止められない。
「ポ、ポーランド…ホントにいいってば!」
「リトうるさいし。まだそんな余裕あるん?」
ポーランドの強気な性格を刺激したらしく、益々過激に攻め立ててくる。
「う…、ポー…もう止め…」
結局オレがポーランドにしたのと同じような目に遭わされる。


「ポーランドのバカ…」
涙目になりながら、オレが言えたのはそれだけだった。
「リト怒ってるん?」
そんなわけないよな?という満足気な表情でポーランドは見つめてくる。
確かに怒ってはいないけど、情けないやら悔しいやら…。この気持ちは一言では言い表せない。…ちょっとさっきのポーランドの気持ちがわかるかも。
何だかもうどうしたらいいのかわからない。半ばどうでもよくなって、オレはソファーに顔を埋める。
「…怒ってないからね」
オレは顔を上げずにとりあえず答えた。
お互い様だ。これでポーランドをなじったら男として終わりな気がする。
「…わ!」
突然ポーランドがオレの背中に覆いかぶさってきた。まだ脱ぎきってないシャツを脱がそうとする。
「な、何?」
「リト…」
背中の傷痕には触れずに、ぎゅっとオレを抱きしめてくる。
「最後まで…しないん?」
耳朶を甘噛みしながら囁く。そんな事されたらせっかく冷めた熱が再燃してしまう。
「さ、最後までって…ポー、本気なの?」
「だってオレ…全然足りないし」
ポーランドは身動きできないオレの首筋や背中を舐めてくる。
「う…たっ、足りないって、オレにこれ以上何させる気なの…」
少しだけ顔を後ろに向けて言う。
「…わかってるくせに」
ポーランドはオレの上から降りて床にひざまづき、オレの耳元まで顔を近付けてさらに囁いた。
「それともオレじゃ嫌なん?」
オレが目を開くと、目の前にはポーランドの顔。
ホント質が悪い。こんな風に誘われて応じないわけにはいかない。逆らえるわけないじゃないか。
「ポーランド…」
手を伸ばしてポーランドの髪を撫でる。
ポーランドは両手を床について身を乗り出すようにオレに口付けをしてきた。
それがあまりに可愛くて、オレは体を起こして両手でポーランドを抱き寄せてもう一度唇を重ねた。
「ん…っ」
ポーランドをソファーに寝かせ、さっきと同じように扇状的な媚態へと導く。
オレと同様、ポーランドも熱を取り戻していた。
そこを掌で優しく触れるだけで面白いくらい反応してくれる。
「…あ、あぁ……っ」
そのまま後ろまで指を伸ばしてみた。前から溢れたものが伝わって濡れてるみたいに見える。そのまま中へ指を押し進めるとポーランドが少し苦しそうな悲鳴をあげた。
「や、あ……っ、ん…」
その声をよそに探るようにゆっくりと動かすと、ある一点で苦痛とは異なる反応を示す。
様子を見ながらそこを重点的に攻め立て、指の数を増やしていく。
「やっ、…抜いて…っ」
涙目になりながらポーランドがうわごとのように繰り返す。
「いいの?…ポーランドが最後までしたいって言ったんだよ?」
オレは少し意地悪く聞き返してみた。
「う…でも、こんなの…あ、…は、恥ずかしくて……死にそうだし…っ…」
焦らしてるつもりはないけど、焦点の合わない目が限界が近い事を物語る。
オレはゆっくり指を引き抜き、ポーランドの両足を抱え上げてそこに自身をあてがった。

「あ……!」
何が起こるのかを理解して、ポーランドは一瞬硬直する。
「ポーランド、大丈夫だから力抜いて…」
本能的な恐怖で逃げるそぶりを見せるポーランドを引き戻し、根拠も保証もない言葉で宥めながら自身を進める。
「いっ、…あぁっ…っ」
ポーランドはぎゅっと目を閉じ、オレを受け入れようと息を整える。
「ポーランド、痛い?ごめんね……でもオレも抑えられない…」
ポーランドから与えられる快楽と、自分が強いているであろう苦痛に少し罪悪感を持ちながらも動きを速めていく。
「あ……っ…」
勝気な瞳から涙が零れ落ちる。その表情がたまらなく色っぽくて、凶暴な欲望が渦を巻く。もっと乱れさせたくてオレは本能のままに攻め立てた。
「あぁっ……で……んで…」
「え、何?」
「あぁっ……なっ、名前…呼んで…っ」
虚ろな瞳で哀願する。
「…オレの名前も呼んでくれる?」
「ん……リト、リト…やっ、あぁっ」
大きく身体を波打たせ、絶頂を迎える。その様子をみながら、しばらくしてオレも自身を解き放った。
「ポーランド、大好きだよ…」
聞こえているかわからないけれど、快楽よりもたまらない幸福感に包まれながらオレは呟いた。




行為が終わってから、ポーランドはしばらく熱でうなされているみたいにぐったりとしていた。
「…大丈夫?」
自分でやったくせに、そっとポーランドの髪を撫でながら尋ねる。
「ん……あ、そういえば…」
上体を突然起こしてオレに向き合う。
「な、何?」
突拍子もない行動には慣れてたはずなのに、反射的にびくっとしてしまう。
「なあなあ、お腹空かん?オレ朝から何も食べてないんよー。」
全裸であっても気にせず、いつもの調子に戻って思った事を次々に口に出す。オレの意のままだったついさっきまでのポーランドはもはやいなかった。
「あれ、もうお昼前か。じゃあそろそろご飯でも作って…あ、そういえばオレも何も食べてない…」
そうだ、朝からポーランドが来たからオレは今日やるべき事を何もしてないんだった。
…眩暈がする。朝っぱらからこんな行為にふけっていていいのかな。
独立して自分の調子もまだよくわからないうちからポーランドに振り回されっぱなしだ。
どれだけ離れていても何事もなかったのように接してくれる憎めない幼なじみ。わがままだけど、わざと空気が読めてないように振る舞ってる事、オレは知ってる。そんなポーランドにどれだけ救われてきたんだろう。
ご飯も食べないでオレの所に来てくれたんだ。そう考えると何だかとても愛おしい。
「リトどうしたん?」
考え込んでしまったオレをポーランドは不思議そうに見る。
「あ、ごめん。ちょっと早いけどご飯にしようか。」
「リトの作るご飯久しぶりだし~。あ、後でパルシュキも作って欲しいんやけど。」
無邪気に笑いながら言う。
「わ、わかったよ。おやつに出すから…」
ホントはそんな余裕はない。でも嫌だとは言えない。
……今日ぐらいはいいよね、せっかくポーランドが来てくれたんだし。
今日は一日中ポーランドに付き合おう。そう決めてシャワーを軽く浴びてからオレは台所に向かった。


料理を手伝おうという気は全くないらしく、ポーランドはソファーでダラダラしている。
「ねぇ、服くらい着てよー。そこでダラダラしてるならシャワーでも浴びたら?」
「リト、ホントうるさいし~。」
ポーランドはぶつぶつ文句を言いながらも風呂場へ向かう。
あ、ポーランドの服ってあったっけ?それとも着替え持ってきてるかな?
ふとそんな事を考えながら、すっかりポーランドのペースに巻き込まれている事に改めて気付く。
…でも久しぶりに振り回されるのも悪くないかな。
そんな風にまた思えるのは、そうじゃなかった日々の思い出があるから。その全てが今にかえられる程、オレはとても満たされた気分だった。
当分はオレが助けてもらう事の方が多いかもしれない。でもこれからはあの笑顔を守る事ができたらいいと心から思う。

「…ずっとこのまま一緒にいれたらいいのに。」

誰にも聞こえないくらい小さな声でそう呟いて、オレは再び包丁を動かすのだった。



   fin.

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