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携帯電話から今流行しているというメロディーが鳴った。ポーランドからの着信だ。それは先日ポーランドに勝手に設定されたもので、他の曲に変えたりするとばれた時に面倒臭いのでそのままにしてある。
「もしもし、ポー?」
『あ、リトー!オレ今からそっち行くし。』
「え、これから?」
『もう近くまで来とるんよー。すぐ着くから何か温かいもの用意しといてな、じゃ!』
「ちょっ、ポー!…あ、切れた。」
いつもの事だけれど勝手だなぁと思いながら、オレはお茶を淹れるためにお湯を沸かした。元々ポーランドが来る予定だったから連絡をくれただけいいのかもしれない。
ちょうどその時オレはクリスマスのための料理を作っていて、食べ物だけはすぐに用意できる状態だった。まだ夕食には早い時間だけど、ポーランドが食べたいと言えば早めに夕食にしても構わないと思った。
「ポー、遅いな…」
ほとんどの料理を作り終わってそう呟いて時計に目をやると、ポーランドから連絡がきてから一時間近く経っていた。
すぐ着くって言っていたからいい加減着いてもいい頃だと思うんだけどな、と思いながら、連絡が入っていないかと携帯電話をチェックする。メールも着信も入っていない。外は雪だし、何かあったのかなと思って電話をかけてみたけれど、出る気配はない。
ほかにやることもなかったので心配になって外に出てみると、遠くに見覚えのある白いコートとピンクのマフラーが見えた。マフラーは先日出かけた時にせがまれてオレが買ってあげたもので、白いコートと合わせると本当によく目立っている。
「リトー!」
ポーランドもオレに気付いたようで、大きく手を振る。
「ポー、遅かったね」
駆け寄ってきたポーランドは心なしか元気がない気がした。
「あー…ちょっと予定が狂ったんよー。」
ポーランドがそれだけしか言わなかったので、オレもそれ以上は何もきかなかった。
オレがそれ以上に気になったのは、ポーランドの多すぎる荷物だ。…食べ物とかならいいけれど、服だったらまた女装とか変な格好を強制されるのかな。脱がされるのとどっちがましだろうとか考えてしまうあたりが、もうそれを前提としているみたいで自虐的だなぁと思う。
「…何笑っとるん?」
ポーランドがいぶかしげにオレを見上げてきて、初めて態度に出していたことに気付く。「あ、ごめん。何でもないよ」と言ったけれど笑いは止まらなかった。
「リト今日なんかおかしいし。」
ポーランドはそう呟いてつまらなさそうにしていたので、「その荷物の中身は何かなと思って」とオレが言うと、とたんにその表情は曇った。おかしいのはオレじゃなくてポーランドじゃないか。
「ポー?」
「え…あー何でもないんよ。服とか色々やけど、別に大したもの入っとらんし」
「ふーん、まぁいいけど…」
それ以上追求すると怒られそうだったので、オレはとりあえずポーランドをリビングのソファーに座らせて紅茶を出した。
ポーランドは珍しく黙り込んで紅茶を飲んでいた。
「ポーランド、コートは脱がないの?」
真っ白なコートを着たままのポーランドを不思議に思ってそうたずねると、思い出したように「リトに見せようと思って今日はクリスマスカラーにしてみたんよー」と言った。
「クリスマスカラー?」
反射的にそう返すと、ポーランドはさっきまでの表情とは一転していつものようにいたずらっぽく笑う。女装を見慣れているせいであまり違和感がなかったけれど、男で白いコートを着るのはあまり見かけない。でも白は雪とか冬をイメージすることはあってもクリスマスカラーとは言えないんじゃないかな、と思っていると、ポーランドは突然立ち上がってそのコートを脱ぎだした。
コートの中から現れたのは緑色のドレス。胸元や裾にはレースとビーズがあしらわれているベロア素材のワンピースだった。全く予想のできなかったその姿に、しばらくオレは何も言えなかった。
「リト、どうよ?」
ポーランドは得意気にそうたずねるとポーズをとってみせた。
「どうって…その格好で家から来たの?」
「そうやけど…コート着とるからわからんし、そんな事どうでもいいやん。それよりどうなん、これ。かわいくないん?」
「うん、かわいいけど…」
オレが呆れながらそう言うと、ポーランドはその反応を予想していたみたいで、今度はそのドレスを脱ごうとする。
その瞬間、オレはポーランドの言葉の意味を理解した。
「え、ちょっと待って、オレの前で脱がないで!!」
そう叫んでポーランド抱きしめるようにしてその動作を止めた。
「ちょっ、リト何するんよ!こんなんじゃ脱げんし。」
オレの腕の中でポーランドはそう文句を言いながらもがいたけれど、解放する気にはなれなかった。
「いいよ、もうわかったから!脱がなくていいから!!」
お願いだから脱がないで!そう続けるとポーランドは急に大人しくなって、「まだクリスマスカラー全部見せとらんのに…」と言った。
「…もうわかったん?」
「うん、わかったから脱がなくていいよ」
そう宥めて脱がないことを約束させてからオレはポーランドを放した。
…絶対にポーランドの下着は赤だ。クリスマスカラーってそういうことだ。
その下着が女物かどうか考えるだけでめまいがする。ドレスを着ていたから女物の下着である可能性は高いけれど、そんなもの突然見せられるのは心臓に悪い。あ、でも洗濯するのはオレだから結局そのうち見るのか…。
「せっかくオレがこんな格好しとるのに、脱がせたくならないん?」
「ならないよ…!」
ポーランドは不満そうだったけれど、はっきり言っておかないと後でまたもめるから仕方がない。ああ、やっぱりポーランドの荷物の中にはオレも分のそういう服があるのかもしれない。
…オレが主導権を握らないとクリスマスが大変なことになる。なんとなくそう思った。
「ねぇポーランド、その格好寒くないの?」
さっきからドレス一枚でソファーに座っているポーランドはオレから見るとちょっと寒そうだ。いくら室内が暖かいとはいえ、コート一枚とこの格好でさっきまで雪の中を歩いていたのだから、このままだと風邪をひくことだってあるかもしれない。
「んーちょっと寒いかも」
そう答えてもポーランドは何かを羽織ったり着替えたりするつもりはないらしく、動こうとしない。
「お風呂入ってきなよ。お腹空いてるでしょ?オレ料理温めて準備しておくから。」
オレが優しくそう言うと、ポーランドは「ん、そーするし」と返して素直にバスルームへ向かった。
「リト」
床に脱ぎ捨てられたポーランドのコートをハンガーにかけていると突然名前を呼ばれた。
「どうしたの?」
振り返るとポーランドがドレス姿のままで「着替え取りにきたんよ」と言って、急にオレに抱きついてきた。
「ポー?」
「…あんなー、期待しとったら悪いから今のうちに言っとくけど」
申し訳なさそうにそう言い始めてすぐに口ごもる。
そんな風に前置きをされたらこっちも緊張してしまう。けれどポーランドが何を言っても怒らないと思うし怒るつもりもないので、その意味を込めてオレは何も言わずに抱きしめ返した。
「クリスマスプレゼント持ってこようとしたんやけど……ちょっと色々あって今日は持ってこれなかったんよー」
次は絶対持ってくるしー、そう続けた後に「ごめんな」とぼそりと言った。
今日会った時に元気がないような気がしたのはこの事を気にしていたからだな、と直感的に思った。
「そんな…謝らなくていいよ、一緒にクリスマス過ごせるだけで十分だよ。」
それは慰めじゃなくて本心だ。一緒に過ごせないクリスマスもあったんだから、こうしていられるだけで本当はもう何もいらないのに。そう言いたかったけれど、気恥ずかしくて言い出せなかった。
「ポーランド、体冷たいよ。風邪ひくよ?」
ポーランドの肩のあたりに触れるとオレが思っていたよりも冷たかった。そこを温めるようにもう一度抱きしめると、ポーランドは突然オレを見上げてキスをしてくる。
「…っ、いきなり何するの」
「とりあえず、大好きやから。そんだけだし」
そう言ってもう一度軽くキスをすると、ポーランドはオレが真っ赤になっている事を笑いながらバスルームへ消えた。
「もう、一体何なの……」
オレはキスされた場所を手で押さえながら体温が上がっているのを恥かしいくらい自覚してしまって、しばらく動けなかった。
クリスマスはまだ終っていないのにこんな調子で大丈夫かな…。刺激的な不安を感じながらキッチンに立ったオレは、そんな事を考えながらコンロに火を入れた。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「クリスマス」。
タイトルはリトアニア語で「一緒に」みたいな意味。
「もしもし、ポー?」
『あ、リトー!オレ今からそっち行くし。』
「え、これから?」
『もう近くまで来とるんよー。すぐ着くから何か温かいもの用意しといてな、じゃ!』
「ちょっ、ポー!…あ、切れた。」
いつもの事だけれど勝手だなぁと思いながら、オレはお茶を淹れるためにお湯を沸かした。元々ポーランドが来る予定だったから連絡をくれただけいいのかもしれない。
ちょうどその時オレはクリスマスのための料理を作っていて、食べ物だけはすぐに用意できる状態だった。まだ夕食には早い時間だけど、ポーランドが食べたいと言えば早めに夕食にしても構わないと思った。
「ポー、遅いな…」
ほとんどの料理を作り終わってそう呟いて時計に目をやると、ポーランドから連絡がきてから一時間近く経っていた。
すぐ着くって言っていたからいい加減着いてもいい頃だと思うんだけどな、と思いながら、連絡が入っていないかと携帯電話をチェックする。メールも着信も入っていない。外は雪だし、何かあったのかなと思って電話をかけてみたけれど、出る気配はない。
ほかにやることもなかったので心配になって外に出てみると、遠くに見覚えのある白いコートとピンクのマフラーが見えた。マフラーは先日出かけた時にせがまれてオレが買ってあげたもので、白いコートと合わせると本当によく目立っている。
「リトー!」
ポーランドもオレに気付いたようで、大きく手を振る。
「ポー、遅かったね」
駆け寄ってきたポーランドは心なしか元気がない気がした。
「あー…ちょっと予定が狂ったんよー。」
ポーランドがそれだけしか言わなかったので、オレもそれ以上は何もきかなかった。
オレがそれ以上に気になったのは、ポーランドの多すぎる荷物だ。…食べ物とかならいいけれど、服だったらまた女装とか変な格好を強制されるのかな。脱がされるのとどっちがましだろうとか考えてしまうあたりが、もうそれを前提としているみたいで自虐的だなぁと思う。
「…何笑っとるん?」
ポーランドがいぶかしげにオレを見上げてきて、初めて態度に出していたことに気付く。「あ、ごめん。何でもないよ」と言ったけれど笑いは止まらなかった。
「リト今日なんかおかしいし。」
ポーランドはそう呟いてつまらなさそうにしていたので、「その荷物の中身は何かなと思って」とオレが言うと、とたんにその表情は曇った。おかしいのはオレじゃなくてポーランドじゃないか。
「ポー?」
「え…あー何でもないんよ。服とか色々やけど、別に大したもの入っとらんし」
「ふーん、まぁいいけど…」
それ以上追求すると怒られそうだったので、オレはとりあえずポーランドをリビングのソファーに座らせて紅茶を出した。
ポーランドは珍しく黙り込んで紅茶を飲んでいた。
「ポーランド、コートは脱がないの?」
真っ白なコートを着たままのポーランドを不思議に思ってそうたずねると、思い出したように「リトに見せようと思って今日はクリスマスカラーにしてみたんよー」と言った。
「クリスマスカラー?」
反射的にそう返すと、ポーランドはさっきまでの表情とは一転していつものようにいたずらっぽく笑う。女装を見慣れているせいであまり違和感がなかったけれど、男で白いコートを着るのはあまり見かけない。でも白は雪とか冬をイメージすることはあってもクリスマスカラーとは言えないんじゃないかな、と思っていると、ポーランドは突然立ち上がってそのコートを脱ぎだした。
コートの中から現れたのは緑色のドレス。胸元や裾にはレースとビーズがあしらわれているベロア素材のワンピースだった。全く予想のできなかったその姿に、しばらくオレは何も言えなかった。
「リト、どうよ?」
ポーランドは得意気にそうたずねるとポーズをとってみせた。
「どうって…その格好で家から来たの?」
「そうやけど…コート着とるからわからんし、そんな事どうでもいいやん。それよりどうなん、これ。かわいくないん?」
「うん、かわいいけど…」
オレが呆れながらそう言うと、ポーランドはその反応を予想していたみたいで、今度はそのドレスを脱ごうとする。
その瞬間、オレはポーランドの言葉の意味を理解した。
「え、ちょっと待って、オレの前で脱がないで!!」
そう叫んでポーランド抱きしめるようにしてその動作を止めた。
「ちょっ、リト何するんよ!こんなんじゃ脱げんし。」
オレの腕の中でポーランドはそう文句を言いながらもがいたけれど、解放する気にはなれなかった。
「いいよ、もうわかったから!脱がなくていいから!!」
お願いだから脱がないで!そう続けるとポーランドは急に大人しくなって、「まだクリスマスカラー全部見せとらんのに…」と言った。
「…もうわかったん?」
「うん、わかったから脱がなくていいよ」
そう宥めて脱がないことを約束させてからオレはポーランドを放した。
…絶対にポーランドの下着は赤だ。クリスマスカラーってそういうことだ。
その下着が女物かどうか考えるだけでめまいがする。ドレスを着ていたから女物の下着である可能性は高いけれど、そんなもの突然見せられるのは心臓に悪い。あ、でも洗濯するのはオレだから結局そのうち見るのか…。
「せっかくオレがこんな格好しとるのに、脱がせたくならないん?」
「ならないよ…!」
ポーランドは不満そうだったけれど、はっきり言っておかないと後でまたもめるから仕方がない。ああ、やっぱりポーランドの荷物の中にはオレも分のそういう服があるのかもしれない。
…オレが主導権を握らないとクリスマスが大変なことになる。なんとなくそう思った。
「ねぇポーランド、その格好寒くないの?」
さっきからドレス一枚でソファーに座っているポーランドはオレから見るとちょっと寒そうだ。いくら室内が暖かいとはいえ、コート一枚とこの格好でさっきまで雪の中を歩いていたのだから、このままだと風邪をひくことだってあるかもしれない。
「んーちょっと寒いかも」
そう答えてもポーランドは何かを羽織ったり着替えたりするつもりはないらしく、動こうとしない。
「お風呂入ってきなよ。お腹空いてるでしょ?オレ料理温めて準備しておくから。」
オレが優しくそう言うと、ポーランドは「ん、そーするし」と返して素直にバスルームへ向かった。
「リト」
床に脱ぎ捨てられたポーランドのコートをハンガーにかけていると突然名前を呼ばれた。
「どうしたの?」
振り返るとポーランドがドレス姿のままで「着替え取りにきたんよ」と言って、急にオレに抱きついてきた。
「ポー?」
「…あんなー、期待しとったら悪いから今のうちに言っとくけど」
申し訳なさそうにそう言い始めてすぐに口ごもる。
そんな風に前置きをされたらこっちも緊張してしまう。けれどポーランドが何を言っても怒らないと思うし怒るつもりもないので、その意味を込めてオレは何も言わずに抱きしめ返した。
「クリスマスプレゼント持ってこようとしたんやけど……ちょっと色々あって今日は持ってこれなかったんよー」
次は絶対持ってくるしー、そう続けた後に「ごめんな」とぼそりと言った。
今日会った時に元気がないような気がしたのはこの事を気にしていたからだな、と直感的に思った。
「そんな…謝らなくていいよ、一緒にクリスマス過ごせるだけで十分だよ。」
それは慰めじゃなくて本心だ。一緒に過ごせないクリスマスもあったんだから、こうしていられるだけで本当はもう何もいらないのに。そう言いたかったけれど、気恥ずかしくて言い出せなかった。
「ポーランド、体冷たいよ。風邪ひくよ?」
ポーランドの肩のあたりに触れるとオレが思っていたよりも冷たかった。そこを温めるようにもう一度抱きしめると、ポーランドは突然オレを見上げてキスをしてくる。
「…っ、いきなり何するの」
「とりあえず、大好きやから。そんだけだし」
そう言ってもう一度軽くキスをすると、ポーランドはオレが真っ赤になっている事を笑いながらバスルームへ消えた。
「もう、一体何なの……」
オレはキスされた場所を手で押さえながら体温が上がっているのを恥かしいくらい自覚してしまって、しばらく動けなかった。
クリスマスはまだ終っていないのにこんな調子で大丈夫かな…。刺激的な不安を感じながらキッチンに立ったオレは、そんな事を考えながらコンロに火を入れた。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「クリスマス」。
タイトルはリトアニア語で「一緒に」みたいな意味。
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