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「リト、おめでとうだし!!」
「え……ポーランド?どうしたの、急に。」
リトはオレの突然の訪問に驚いたらしく、玄関先で二秒くらい固まっていた。
「お祝いに来たんよー、今日建国記念日やろ?」
「そうだけど…」
「それって誕生日みたいなもんやん。だったらお祝いしなきゃだし!」
「お祝いって……ねえポーランド、その袋何?」
リトはオレの持っていた袋を指差す。
「プレゼント…っていっても食材なんやけど。」
オレはそう言って袋の中身を少し見せた。野菜や肉やきのこ、それからお菓子の材料が少し。リトもそれに気付いたらしく、複雑な表情をしている。
「……まさかオレにその材料で何か作れって言うんじゃないよね…?」
「や、今日の夕飯はオレが作るし!!」
「え…ポーランドが作ってくれるの…?」
オレの答えにリトはあからさまにほっとした顔をする。…そんなに今忙しいんかな。
「何、嫌なん?」
「ううん…嬉しいよ。ポーの料理とっても久しぶりだしね。」
「でもオレはリトの料理の方が好きだし!…だから今日は特別な。」
「うん…。とりあえず上がって、ポーランド。」
苦笑しながらリトはドアを大きく開けてオレを通してくれた。
家に上がると、リビングにいくつかの小包や花束が置かれているのが目に付いた。
「あれ、何なん?」
オレの視線の先にあるそれが何なのかなんて、リトの返事をきかなくったって本当はわかっていた。
「ああ、あれ?エストニアたちからの贈り物だよ。今日忙しくて直接会って言えないからって。」
「ふーん、そうなん…」
予想通りだったその答えに素っ気無くそう呟くと、オレはキッチンに向かった。リトはそんなオレの様子をわかっていたようだったけれど、いつもの気まぐれだと思ったらしく、あまり気にしてないみたいだった。
「ポーランド、オレちょっとやらなきゃいけない事があるから…」
「あー、リトは夜まで好きにしたらいいし」
「本当?じゃあ何かあったら呼んでね。」
「わかっとるしー」
いつもの調子でオレが返事をするとリトは安心したらしく、キッチンからいなくいった。
***
しばらくすると、リビングのあたりからリトの笑い声が聞こえ始めた。
もう20分は経っただろう。さっきからずっとリトは誰かと楽しそうに電話をしている。たぶんアメリカあたりに贈り物のお礼の電話をして、久しぶりに話が弾んでいるんだろう。
そんな憶測のせいなのか、いつもは耳に心地よいはずのリトの明るい声が今のオレには癇に障る。
…気に入らない。リトの事考えてるのはオレだけじゃなかった。
久しぶりにキッチンに立った事とそんなつまらない嫉妬じみた感情のせいで、思うように料理が進まない。
確かにリトはお人好しだし、ロシアやアメリカの家でもうまく適応しとったってきくから誰にでも好感を持たれるのはわかるんよ…。
よく考えなくても、オレがこうやって覚えているくらいやからエストニア達がこんな日を忘れるはずがないし、さっきちらっと見た限りではロシアや日本からも何か届いてたみたいやった。
リトの人徳はどれほどのものなん?少なくとも人見知りなオレが思っている以上にあることだけは明らかだし……だからってそれは悪い事じゃないし、オレがどうこう言うものでもない事くらいはわかってるんよ。大体そんなんでキレたら後から思い出して恥ずかしくなるに決まっとるし。
…そもそもこれはリトのお祝いなんやから、いろんな人から慕われているリトを一緒に祝って喜ぶべきなんよ、たぶん。
…でもそんなんなんか嫌だし、割り切れん。
了見狭いのはわかっとるけど、オレだけは他の連中とは違うって思うし、リトにもそう感じてほしい。
だんだん思考が自虐的になってきたオレは、手を止めて大きくため息をついた。
「…なんでこんな気持ちにならんといけんの…」
純粋にリトを祝えばいい。頭ではそうわかっているのに踏ん切りをつけられないオレは、無意識にそんな独り言をこぼす。そうして無理矢理気持ちを切り替えて料理に集中しようと試みた。
***
数時間後、何とかオレの体裁を保つだけの料理を作ってテーブルに並べる。
サラダにジューレック、ピエロギ、ガラレッタ、ビゴス、他にもリトんちの料理もいくつか作った。デザートも準備してある。事前に準備が必要なものもあるから、それなりに手間がかかってるものもあった。
二人分にしては作りすぎかもしれんけど、今日はお祝いだし、足りないよりは余った方がマシだと自分を納得させる。
「いい匂いだね、夕飯もうできたの?」
リトが匂いにつられてキッチンに入ってきた。
時計を見ると七時。もう夕食時だ。
「リト…お礼の電話終わったん?」
「うん、大体ね。電話に出なかった人はまた後でかけ直すよ。」
「……」
「ポーランド?」
「あ、ごめん。何でもないし。」
「…オレお腹空いたんだけど、もう夕食にしてもいい?」
「ん、もう準備はできとるし!リト飲み物どれにするん?」
「せっかくだからお酒でも飲もうかな。」
「じゃあリトんちに置いてあるベルヴェデーレにするしー!」
オレは飲み物を用意するとエプロンを外して席に着いた。
***
それからは二人で乾杯して、用意した料理を食べ始めると結構あっという間だった。
初めはリトも「作りすぎじゃない?」って言っとったけど、なんだかんだ言ってオレたちはデザートまで完食した。
「あーもうお腹いっぱいで動けんしー。」
片付けを終えてソファーでくつろぎながらオレはリトにくっついた。
「あんなに作ったのはポーランドでしょ。オレだって今日はかなり食べたよ。」
リトはオレの背中に手を回すと、いつもの穏やかな声でそう言った。
「やっぱお腹いっぱい食べると幸せやねー」
「ポーランドはいつも気の済むまで食べてるじゃない」
「…まぁそうやけど」
目を細めて笑うリトに、同じように微笑み返した。
結局今日リトの家にはオレ以外は誰も来なかった。
贈り物をしたり電話でリトとやりとりしていた人はいるけれど、こうやって会って話をして一緒にご飯を食べたりしたのはオレ一人だけだ。
そんな些細な事がさっきまでの胸のつかえを嘘のように払拭させる。
リトのお祝いなのに、オレが勝手に満ち足りた気分になるのはおかしなことかもしれないけど、それでもこうして一緒に過ごせる事が嬉しかった。
「……」
「リト、どうしたん?」
突然目を伏せて黙り込んだリトにオレは訊ねる。
「ん、ちょっとね。…なんかこういう日って、はじめから特別な日っていうわけじゃないんだなあと思って。」
「え…どういう意味なん?」
「オレがどう思っていようと今日は普通の日で、オレが何かしようと思ってもそれだけでは特別な日にはならないんだって事。」
リトはそう言うと照れくさそうに笑った。でもそれがどういう意味だったのかオレにはわからんかった。
そんなオレの怪訝そうな顔からまだ理解していない事を悟ったのか、リトは気恥ずかしそうにまた口を開く。
「……ポーランドたちがこうして祝ってくれるから特別な日になるんだよ。オレにとってどういう日かじゃなくて、まわりの皆が特別な日にしてくれるんだなぁって思って…それってすごく贅沢で幸せな事でしょ?」
「…オレのおかげ?」
「うん、そうだよ」
「…やっぱオレすごいし!」
「うん、ポーランドはすごいよ。」
真面目に話してたリトの顔が次第にほころんでいくのを見ながら、オレはさっきの気持ちが自己満足なんかじゃなかった事にほっとする。
「…リトがそんなに言うんなら来年も何か作ってやるし!」
「来年も祝ってくれるって事?」
「そんなん当たり前だし!リトの特別な日はオレにとっても『特別な日』なんよ。」
そう言いながらオレはリトの額に口付けをする。
「うん…ありがと」
そんないつもの流れをリトは自然に受け入れてくれる。
「来年もずっと一緒だし」
「……そうだね…」
リトにとって「特別な日」じゃなくても、今までこうして隣にいられた事は当たり前なんかじゃないから、一緒にいられるのは「特別な事」なんよ。…だから何でもない日でも贅沢で幸せなのはオレの方だし、たぶんこれからもそれは続くんよ。
きまりが悪いからそれはリトには言ってやらんけど、二人でいて良かったって来年もオレは感じるんやろうな。
リトがオレと同じ事を考えているかはわからんけど、それから二人してちょっと泣きそうになったのは偶然なんかじゃないと思う。それでもお互いに気付いていないふりをしてやり過ごしたなんて、たぶん誰にも言えない。
リトのぬくもりを感じながら、こんな気恥ずかしい事もいつか懐かしく思える日が来るんだろうなと、両腕に力を込めてオレは珍しく感慨にふけった。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「建国記念日」。
「え……ポーランド?どうしたの、急に。」
リトはオレの突然の訪問に驚いたらしく、玄関先で二秒くらい固まっていた。
「お祝いに来たんよー、今日建国記念日やろ?」
「そうだけど…」
「それって誕生日みたいなもんやん。だったらお祝いしなきゃだし!」
「お祝いって……ねえポーランド、その袋何?」
リトはオレの持っていた袋を指差す。
「プレゼント…っていっても食材なんやけど。」
オレはそう言って袋の中身を少し見せた。野菜や肉やきのこ、それからお菓子の材料が少し。リトもそれに気付いたらしく、複雑な表情をしている。
「……まさかオレにその材料で何か作れって言うんじゃないよね…?」
「や、今日の夕飯はオレが作るし!!」
「え…ポーランドが作ってくれるの…?」
オレの答えにリトはあからさまにほっとした顔をする。…そんなに今忙しいんかな。
「何、嫌なん?」
「ううん…嬉しいよ。ポーの料理とっても久しぶりだしね。」
「でもオレはリトの料理の方が好きだし!…だから今日は特別な。」
「うん…。とりあえず上がって、ポーランド。」
苦笑しながらリトはドアを大きく開けてオレを通してくれた。
家に上がると、リビングにいくつかの小包や花束が置かれているのが目に付いた。
「あれ、何なん?」
オレの視線の先にあるそれが何なのかなんて、リトの返事をきかなくったって本当はわかっていた。
「ああ、あれ?エストニアたちからの贈り物だよ。今日忙しくて直接会って言えないからって。」
「ふーん、そうなん…」
予想通りだったその答えに素っ気無くそう呟くと、オレはキッチンに向かった。リトはそんなオレの様子をわかっていたようだったけれど、いつもの気まぐれだと思ったらしく、あまり気にしてないみたいだった。
「ポーランド、オレちょっとやらなきゃいけない事があるから…」
「あー、リトは夜まで好きにしたらいいし」
「本当?じゃあ何かあったら呼んでね。」
「わかっとるしー」
いつもの調子でオレが返事をするとリトは安心したらしく、キッチンからいなくいった。
***
しばらくすると、リビングのあたりからリトの笑い声が聞こえ始めた。
もう20分は経っただろう。さっきからずっとリトは誰かと楽しそうに電話をしている。たぶんアメリカあたりに贈り物のお礼の電話をして、久しぶりに話が弾んでいるんだろう。
そんな憶測のせいなのか、いつもは耳に心地よいはずのリトの明るい声が今のオレには癇に障る。
…気に入らない。リトの事考えてるのはオレだけじゃなかった。
久しぶりにキッチンに立った事とそんなつまらない嫉妬じみた感情のせいで、思うように料理が進まない。
確かにリトはお人好しだし、ロシアやアメリカの家でもうまく適応しとったってきくから誰にでも好感を持たれるのはわかるんよ…。
よく考えなくても、オレがこうやって覚えているくらいやからエストニア達がこんな日を忘れるはずがないし、さっきちらっと見た限りではロシアや日本からも何か届いてたみたいやった。
リトの人徳はどれほどのものなん?少なくとも人見知りなオレが思っている以上にあることだけは明らかだし……だからってそれは悪い事じゃないし、オレがどうこう言うものでもない事くらいはわかってるんよ。大体そんなんでキレたら後から思い出して恥ずかしくなるに決まっとるし。
…そもそもこれはリトのお祝いなんやから、いろんな人から慕われているリトを一緒に祝って喜ぶべきなんよ、たぶん。
…でもそんなんなんか嫌だし、割り切れん。
了見狭いのはわかっとるけど、オレだけは他の連中とは違うって思うし、リトにもそう感じてほしい。
だんだん思考が自虐的になってきたオレは、手を止めて大きくため息をついた。
「…なんでこんな気持ちにならんといけんの…」
純粋にリトを祝えばいい。頭ではそうわかっているのに踏ん切りをつけられないオレは、無意識にそんな独り言をこぼす。そうして無理矢理気持ちを切り替えて料理に集中しようと試みた。
***
数時間後、何とかオレの体裁を保つだけの料理を作ってテーブルに並べる。
サラダにジューレック、ピエロギ、ガラレッタ、ビゴス、他にもリトんちの料理もいくつか作った。デザートも準備してある。事前に準備が必要なものもあるから、それなりに手間がかかってるものもあった。
二人分にしては作りすぎかもしれんけど、今日はお祝いだし、足りないよりは余った方がマシだと自分を納得させる。
「いい匂いだね、夕飯もうできたの?」
リトが匂いにつられてキッチンに入ってきた。
時計を見ると七時。もう夕食時だ。
「リト…お礼の電話終わったん?」
「うん、大体ね。電話に出なかった人はまた後でかけ直すよ。」
「……」
「ポーランド?」
「あ、ごめん。何でもないし。」
「…オレお腹空いたんだけど、もう夕食にしてもいい?」
「ん、もう準備はできとるし!リト飲み物どれにするん?」
「せっかくだからお酒でも飲もうかな。」
「じゃあリトんちに置いてあるベルヴェデーレにするしー!」
オレは飲み物を用意するとエプロンを外して席に着いた。
***
それからは二人で乾杯して、用意した料理を食べ始めると結構あっという間だった。
初めはリトも「作りすぎじゃない?」って言っとったけど、なんだかんだ言ってオレたちはデザートまで完食した。
「あーもうお腹いっぱいで動けんしー。」
片付けを終えてソファーでくつろぎながらオレはリトにくっついた。
「あんなに作ったのはポーランドでしょ。オレだって今日はかなり食べたよ。」
リトはオレの背中に手を回すと、いつもの穏やかな声でそう言った。
「やっぱお腹いっぱい食べると幸せやねー」
「ポーランドはいつも気の済むまで食べてるじゃない」
「…まぁそうやけど」
目を細めて笑うリトに、同じように微笑み返した。
結局今日リトの家にはオレ以外は誰も来なかった。
贈り物をしたり電話でリトとやりとりしていた人はいるけれど、こうやって会って話をして一緒にご飯を食べたりしたのはオレ一人だけだ。
そんな些細な事がさっきまでの胸のつかえを嘘のように払拭させる。
リトのお祝いなのに、オレが勝手に満ち足りた気分になるのはおかしなことかもしれないけど、それでもこうして一緒に過ごせる事が嬉しかった。
「……」
「リト、どうしたん?」
突然目を伏せて黙り込んだリトにオレは訊ねる。
「ん、ちょっとね。…なんかこういう日って、はじめから特別な日っていうわけじゃないんだなあと思って。」
「え…どういう意味なん?」
「オレがどう思っていようと今日は普通の日で、オレが何かしようと思ってもそれだけでは特別な日にはならないんだって事。」
リトはそう言うと照れくさそうに笑った。でもそれがどういう意味だったのかオレにはわからんかった。
そんなオレの怪訝そうな顔からまだ理解していない事を悟ったのか、リトは気恥ずかしそうにまた口を開く。
「……ポーランドたちがこうして祝ってくれるから特別な日になるんだよ。オレにとってどういう日かじゃなくて、まわりの皆が特別な日にしてくれるんだなぁって思って…それってすごく贅沢で幸せな事でしょ?」
「…オレのおかげ?」
「うん、そうだよ」
「…やっぱオレすごいし!」
「うん、ポーランドはすごいよ。」
真面目に話してたリトの顔が次第にほころんでいくのを見ながら、オレはさっきの気持ちが自己満足なんかじゃなかった事にほっとする。
「…リトがそんなに言うんなら来年も何か作ってやるし!」
「来年も祝ってくれるって事?」
「そんなん当たり前だし!リトの特別な日はオレにとっても『特別な日』なんよ。」
そう言いながらオレはリトの額に口付けをする。
「うん…ありがと」
そんないつもの流れをリトは自然に受け入れてくれる。
「来年もずっと一緒だし」
「……そうだね…」
リトにとって「特別な日」じゃなくても、今までこうして隣にいられた事は当たり前なんかじゃないから、一緒にいられるのは「特別な事」なんよ。…だから何でもない日でも贅沢で幸せなのはオレの方だし、たぶんこれからもそれは続くんよ。
きまりが悪いからそれはリトには言ってやらんけど、二人でいて良かったって来年もオレは感じるんやろうな。
リトがオレと同じ事を考えているかはわからんけど、それから二人してちょっと泣きそうになったのは偶然なんかじゃないと思う。それでもお互いに気付いていないふりをしてやり過ごしたなんて、たぶん誰にも言えない。
リトのぬくもりを感じながら、こんな気恥ずかしい事もいつか懐かしく思える日が来るんだろうなと、両腕に力を込めてオレは珍しく感慨にふけった。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「建国記念日」。
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