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リトは相変わらずオレの気持ちを無視してベラばかり追いかけてる。
オレがせっかく泊まりに来てもベラの夢なんか見とるし。
今朝なんか「ベラルーシちゃん!!」って叫んで起きとった。隣でオレが寝とるのにマジありえん…。
オレがリトを見下ろしながら「お前いい加減にしたらどうなんよ」って言っても「何の事?」ってとぼけるし。
ベラの夢見るの一体何回目だと思っとるんよ。…まぁ見る夢の内容なんて一概にリトのせいにはできんけど、そんなんオレがいない時に見ればいいのに。
オレがそんな事考えとったら、いきなりリトが「あとちょっとだったのに…」とか呟く。何の事なん?てきいたら「ベラルーシちゃんにあとちょっとで手が届きそうだったのに…」とか言って悔しがるんよ。オレが呆れとったらリトは「ポーランドってベラルーシちゃんに冷たいよね」って白い目で見る。…だったら少しはオレ気持ちも考えたらどうなんよ、って言い返そうと思ったけど、そこまで言ったらリトに心が狭いって思われそうやったし、大体ベラに嫉妬するとかありえんから「お前のその性格どうにかならんの…」って呟いて我慢した。

「ねぇポーランド、今日はベラルーシちゃんからしめじが届いてないんだ。どうしたんだろう…」
オレがソファーでくつろいでると、キッチンから出てきたリトは開口一番そんなことを言った。朝ごはんできたよ、って言われると思ったのに何でベラの話なんよ。
「ポストにしめじが突っ込まれとるのは別にお前に届けてるわけじゃないし、毎日やる義務もないやろ」
「どうしてそんなひどい事言うかな…。毎日届いてたものが届かないなんて、きっと何かあったんだよ。心配だなあ。」
オレの意見なんか無視してリトは独り言のように呟く。
「なぁ、なんでお前ベラを見る時だけそんなにおかしいん?しめじは嫌がらせなんよ。いい加減気付けだし。」
「何言ってるのポーランド!しめじは生ものだからベラルーシちゃんがわざわざ直接届けてくれてるんだよ。彼女なりに気を使ってくれてるって事じゃないか…!一言のメッセージも添えられてないのは残念だけど、そういう愛情表現なんだよ。確かに誤解されやすいのかもしれないけど…そこがベラルーシちゃんらしくていいんじゃないか。」
リトははにかみながらそんな事を言った。
ベラがリトに振り向くなんてありえんのはわかっとるけど、なんでオレがこんな事きかされんといけないん?オレはリトの何なんよ。っていうかオレだけがリトの事好きなんてバカみたいやん。
…そう言えたら楽なんやけど、オレにもプライドってもんがあるし、かといってこのままってのも何か落ち着かない。だからオレ色々考えたんよ。そして、オレにこんな思いさせとるリトに復讐しつつ恨まれんで許される日が一日だけある事に気付いた。



その日、オレは前日からリトんちに泊まって早朝こっそりベラを見張った。
「…なぁ、ホントにお前リトへの嫌がらせだけのためにそんな事しとるん?」
ごそごそとポストにしめじを突っ込むベラにオレはきいた。ベラはちらっと一瞬だけオレを見ると、何事もなかったかのようにまたその作業を続けた。
「まぁお前が何のためにこんな事しとるのかはどうでもいいんよ。でも今日はそれ以外にやって欲しいことがあってオレはわざわざこんな時間に起きたんよ。」
オレもベラの態度に構わず喋り続けとったら、ものすごくうざそうな顔をされた。相変わらず無言だったけど、ロシアからもらったものをやるって言ったらベラはとりあえずオレの頼みをきいてくれた。そんなんでオレの頼みをきいてくれるんやから、リトの気持ちなんてベラには1㎜も伝わっとらんって実感した。リトってホント報われん事ばっかりしとるよな…。
オレがベラに頼んだのはたった一言のメモを書いてもらう事。別にラブレターってわけでもないから、かわいいイタズラやと思う。それをベラがさっきしめじを突っ込んどったポストに一緒に入れた。
「あ、もうベラ帰るん?」
「……」
目的が果たせたオレが上機嫌できいたらベラは相変わらずやった。お前たまには笑ってみたらどうなんよ?ってオレが冗談言ったら、「おい」って言われていきなり肩を掴まれた。
「な、何なん?」
珍しくベラと目が合う。何だか嫌な予感がした。
「え…、ちょっ……!!」
ベラにちゅーされた。ありえん…なんでオレがこんな事されんといけんの?
「いきなり何するんよ…!」
「…今日はエイプリルフールとやらなんだろう?」
「だからっていきなりちゅーするとかありえんし!」
「冗談だ。」
ベラはいつもの仏頂面で悠然と言った。
「…エイプリルフールは嘘ついてもいい日で、ちゅーしたりするのとは違う気がするんやけど。」
「じゃああいつに好きだとでも言えはいいのか」
「や、それはリト本気にするからやめた方がいいし。」
「……」
オレの返事にベラはまた黙り込んで「そうか」と呟いた後、一言の挨拶もせずに帰っていった。
予想外の事態にちょっと焦ったけど、まだエイプリルフールは始まったばかりだし、こんなんで疲れとる場合じゃないんやった、とオレは思い直した。



「ねぇポーランド、これ見てよ!ベラルーシちゃんから手紙がきたんだ!!」
こっそり寝室に戻って二度寝をしとったら、なんでこいつこんなに興奮しとるの、って思うくらい満面の笑みでリトがオレに報告しに来た。ベラに書いてもらったのはただのメモやから「手紙」なんて表現は大袈裟だと思うんやけど、とりあえずオレはそれを見てやった。
メモには「4月1日PM1時、ヴィリニュス駅、ベラルーシ」とだけ書いてある。
「ねぇこれってデートの誘いだよね?どうしよう…ベラルーシちゃんから正式に誘われるなんて初めてだよ!」
「リト、こんなメモ本気にしとるん?…お前絶対騙されとるし。」
何着て行こうかなあ、なんていい気になっとるリトにちょっと頭にきてオレはそう返したけど無駄みたいやった。「ベラルーシちゃんがわざわざ贈り物と一緒に添えてくれたんだから、これは彼女の精一杯の愛情表現なんだよ。デートに誘われるなんてすごい進歩だよ!」とか言ってたし。
まぁ別にいいんよ、どうせメモはウソだしベラはいくら待ったって来るわけないんやから。
「ポーランド、悪いけどオレ今日のお昼は出かけるから。」
リトはそう言ってオレの返事も聞かんで朝食を作りに上機嫌でキッチンへ消えた。



「もうそろそろかな…」
ソファーで寝そべりながらリビングの時計を見てオレはそう呟いた。
リトが出かけて二時間くらい経った。リトのあの様子からして、来ないベラを律儀に待っとるに違いない。
オレだってリトを陥れたいわけじゃない。そろそろエイプリルフールだって事をばらしてやってもいいタイミングだと思って、オレは出かける準備をした。
ヴィリニュス駅の近くまで来たオレは、少し離れた所からリトの様子を窺った。
予想通りリトはまだ待っとった。今朝のベラの様子がおかしかったから、もしかしたらベラが来るんやないかとか内心思ったりもしたけど、それは杞憂だったようだ。
…なんでオレそんな事に安心しとるんやろ。
そう思う自分になんか気恥かしくなったりしたけど、今は一刻も早くばらしてやろうと思ってオレはリトに駆け寄った。
自分で仕組んどいてこんな風に思うのはおかしいけど、さすがに二時間以上は待たせすぎやったかな。でもオレの言う事もきかんで勝手に浮かれとるリトが悪いんよ。
「リトー!」
「あれ…ポーランド、どうしたの?」
近づいたオレに気付いたリトはにこやかにそう言った。
なんかオレの思ってた展開と違う気がする…どうも腑に落ちない。待たされすぎて疲れとると思ったのに、何でこいつこんなに元気なん?
「リト、まだベラなんか待っとるん?」
「そりゃもちろん…ベラルーシちゃんからこんな風に誘ってもらって待たないわけないじゃない。」
確かにちょっと遅いけどきっと事情があって遅れてるんだよってリトは続ると、オレが頼んでもいないベラルーシトークを始めた。
「リト、あんなー…ベラは来ないんよ。」
「え、何それ。どうしてポーランドがそんな事わかるの?」
「だって今朝のメモ仕組んだのオレだし」
「…どういう事?」
リトは首ひねる。
「だーかーらー!リト、今日は何の日か知っとるん?」
「知ってるよ、エイプリルフールでしょ。」
オレが勿体ぶりながらばらしてやろうと思ってた事をあっさりとリトは言った。
「なっ…知ってたん?じゃあ何で…」
気付かないんよ、そう続けようとした時、ようやくオレは違和感の正体に気付いた。
「あ…!」
「気付いてたから騙されたんだよ、ポーランド。」
リトはそう言って得意げに笑った。…今オレは相当変な顔をしているに違いない。
「……何で気付いたん?」
「初めはちゃんと騙されてたよ。でもポーランドがあまりにも大人しいから何か変だなって…で、さっき家に電話入れたらとらなかったから、ああポーランド今から来るなって思って待ってたんだよ。」
「う~……知ってたんならちゃんと最後まで騙されろだしー。」
歯がゆい思いでオレがそう言うと、「それじゃエイプリルフールの意味ないじゃない」ってリトは言って目を細めた。悔しい…。
「……リト、ちゅーして。」
「え…いきなりどうしたの?」
「オレ今朝早起きしてベラに会ったんよ。」
「うん。それでキスするのとベラルーシちゃんと会った事と何か関係があるの?」
「でな…ちゅーされたんよ、ベラに。」
「何それ。さっきのエイプリルフールのウソまだ続いてるの?」
リトは軽く笑うと、まだ何か疑ってるような目でオレを見た。
「違うし!ホントにベラにちゅーされたんだし!!リトはオレのこと疑うん?」
「だって…どう考えてもありえないじゃない。どうしてベラルーシちゃんがポーにキスするのさ。」
まぁ確かにリトの言うことはわかる。オレだってありえんって思ったし。
「…エイプリルフールだからって言われた。」
「え?」
「エイプリルフールだからちゅーされて冗談だって言われたんよ!…今日はありえないことがありえる日なんよ?せっかくリトにもベラのちゅーわけてやろうと思ったのに…。」
オレの言葉にリトは面食らったらしく、しばらく黙っとった。
「……本当に?」
「ホントだし!」
「本当にベラルーシちゃんがポーにキスしたの?それがウソだって言われたら、オレかなり怒るよ?」
「いや、いくらオレでもそんなウソ言わんし!」
オレがそこまで言って、リトはようやく信じたみたいだった。
「……ポーランド、ずるい。」
「は!?」
「オレだってベラルーシちゃんにキスされたかったのに!」
「はぁ?何でそうなるんよ…」
「だってそうじゃない。ポーランドは今日ベラルーシちゃんに会ったからキスされたんでしょ?エイプリルフールだからって言われて!だったらベラルーシちゃんに今日会ったのがオレでも同じことが起こり得るじゃない。」
「や、それはないし。」
「何でそんな事わかるのさ。」
「考えなくてもそんな事わかるし。」
「何言ってんの、ポーランド。」
…リトはこうなったら手がつけられない。オレが何を言っても悪あがきでしかない。きっとそのうち「じゃあ今からベラルーシちゃんに会って確かめるから」とか言い出すんよ。
でもそんな事わかってても、やっぱりオレはリトとのこういうやりとりをやめられない。
……こんな事になったのも全部ベラが悪いんよ。そう思うことにして、オレはそんな悪意に満ちた平和に少しだけ居心地の良さを感じた。



fin.


***
 「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「エイプリルフール」。

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