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「はーマジつまらんし。」
祝賀会会場の隅でため息とともにそう呟いて人目につかないようにオレはしゃがみ込んだ。
今年はリトのミレニアム。正確にはリトが文献に登場して千年らしいんやけど、それを記念してリトの家では去年からいろんな企画が進行中だってこの間リトが言ってた。
そんな滅多にない記念ならオレもリトん家に行って祝ってやろうと思って、元日、家での用事を済ませて夕方からこうしてリトのミレニアム祝いに駆けつけてみた。
祝賀会の会場は人で溢れていて、リトを探すのも一苦労だった。やっと見つけたリトはたくさんの人に囲まれていて、とても話しかけることなんてできんかった。これが国際会議とかなら人目を気にしないで図々しく話しかける度胸くらいは持ち合わせてるけど、今日はリトが主役で、オレから見たら鬱陶しい賓客たちも皆リトを祝いに来てる。こんな席でリトに迷惑かけるなんてありえんと思って、仕方なくオレは会場の隅でさっきからずっとリトの周りから人がいなくなるのを待っていた。ミレニアムの初日、リトは多忙なスケジュールをこなしているらしく、笑顔で取り繕っているけど少し疲れているみたいだった。
…リト、初日からこんなんで大丈夫なんかな。
オレがそう思った時、リトが人垣を離れて会場から出て行くのが見えた。チャンスだと感じて、思わずその後を追う。リトの向かった先は関係者しか入れない控え室のある場所で、その非常口にリトの姿はあった。
「リト!!」
あまりにリトが早く歩いて追いつけないので、たまらずオレは叫んだ。
「ポーランド?」
リトはオレの姿を認めると、その足を止めた。
「ポーランド…来てくれたんだ。そういえば今日喋るの初めてだね。」
いつもはずっとオレの側にいるのにね、とリトがにこやかに言う。
「…オレの前でまで作り笑いしなくていいし!」
その微笑が癇に障って思わず怒鳴ってしまった。本当は待たされたのなんて気にしてないそぶりでリトにおめでとうって言いたかったのに。
「ポー?」
「……」
「オレ屋上行くんだけど、一緒に来る?」
オレが自己嫌悪に陥って何も言えずに黙っていると、少しため息をついてリトはそう言ってくれた。これもいつもの事だから、オレの気持ちと態度が違うのだと解してくれたのだと思う。だからその問いに俯きながら小さく頷いた。
リトと二人で非常口から外階段を通って屋上へ向かう。屋上についてすぐに目に入ったのは、さっきまでいた会場とはまた別の華やかさを放つ星空だった。珍しく雲ひとつない夜空で、冬の澄んだ空気が一層星々を煌かせているような気がした。
「…リト疲れとらん?」
二人ともしばらくは無言で星空を見上げていたれど、その沈黙をオレが破った。
「少しはね。でも皆が祝ってくれてるし…忙しいのは仕方ないよ。」
「リトはそれでいいん?」
「まぁ千年の記念なんてそうそうないし、いいんじゃないかな。」
千年―リトが物心ついてから実際にはどれほどの時間が経っているんだろう。
「…千年かぁ…」
「なあ、リトは今までの事どう思っとるん?」
何気なくそう思ってきいてみた。
「うーん、色々ありすぎて一言では言い表せないよ。…だって信じられないもの」「信じられんって何がなん?」
「もうそんなに経つだなんて。…オレが物心ついた時にはたくさんの国がまわりにいて、皆と争ったり仲良くしたりして目まぐるしかったもの……ポーランドとでさえ争ったこともあるのにね。」
本当はもっと複雑な過去があるはずなのに、あえてリトは簡潔に語る。
「でも良かったよ、なんだかんだいって今は独立してとりあえず平和だし。…問題は山積みだけどね。」
思うところがあっても文句が出てこないのはリトの性格もあるけど、現状に満足してるからなんかな。
「…リトの言う平和って何なん?誰とも戦争しとらん事?」
「まぁ、それもあるけど……今こうやって一緒にいられる事、かな?全てがうまくいってるわけじゃないけど、とりあえず落ち着いてミレニアムを迎えられるのは幸せな事だと思うよ。」
リトはわざとなのか、「ポーランドと一緒にいられる事」とは言わなかったのに、なんだか照れくさくて仕方がない。
「リト、さり気なく恥かしい事言っとらん?」
「え、そうかな?」
「…まぁええけど」
「これは単なる時間の区切りでしかないよ。またいつ何が起こるかわからないし。オレは…オレたちはもっと次の時代に夢を繋げられる力を持たなくちゃいけない気がする。」
穏やかな声でリトは呟くように言った。
「そうかもしれんけど…リト、やっぱオレなんか恥かしいわ」
あまり突っ込めないのと恥かしいのが相俟って、リトの顔を見れない。オレも数十年前に比べれば考えられないくらい幸せと言える状況にあって、リトとはお互いに独立して良好な関係を保っている。
だから口には出さないけどこんな風にリトのミレニアムを祝えるのは本当に嬉しいんよ。
「星…キレイやね」
「うん。なんだか昔を思い出すね。」
都会で仰ぐ夜空はかつて麦畑の中で見た満点の星空に比べれば大したことはないけど、オレたちを照らす古い星の光の優しさは変わっていないような気がしたし、一緒にいられる幸せをささやかに感じられるだけの温かさがあった。
「次のミレニアムも一緒に星見るんよ、リト」
「うん…そうだね。」
「絶対見るんよ、約束だし!」
リトが言ってたように、全てがうまくいってるとは言えないし、これは単なる時間の区切りでしかないからこの先がどうなるかは誰にもわからない。
確かにそうかもしれん。けど、それでも。
この長い年月の間に一緒に過ごせた日々が確かにあったから、これからもそれを続けていきたいと思うんよ。
リトも同じように思っていてくれるって信じてるし。
「なぁリト、そんな薄着で寒くないん?」
真面目に考え事をしていたのに心なしかお腹が空いてきてリトに話をふる。本当は寒いと思ってるのはオレの方で、リトもそれを解ってるから、早く中に入ろう、とリトを見上げると優しく微笑み返してくれた。
「あ…そうだね。そろそろ中に入ろうか。」
リトが言い終わらないうちにオレはリトに腕組みをして中へと急かす。今度は作り笑いじゃない笑顔で答えてくれたのが嬉しくて、その腕のぬくもりをとても愛おしく感じた。
一緒にいられる幸せ。
そんな小さな幸せは、途切れながらも確かに続いていくのだと思った。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「ミレニアム」。
リトアニアミレニアムなのにポー視点という残念なSSになりました。しかもリトほとんど喋ってないし(笑)
祝賀会会場の隅でため息とともにそう呟いて人目につかないようにオレはしゃがみ込んだ。
今年はリトのミレニアム。正確にはリトが文献に登場して千年らしいんやけど、それを記念してリトの家では去年からいろんな企画が進行中だってこの間リトが言ってた。
そんな滅多にない記念ならオレもリトん家に行って祝ってやろうと思って、元日、家での用事を済ませて夕方からこうしてリトのミレニアム祝いに駆けつけてみた。
祝賀会の会場は人で溢れていて、リトを探すのも一苦労だった。やっと見つけたリトはたくさんの人に囲まれていて、とても話しかけることなんてできんかった。これが国際会議とかなら人目を気にしないで図々しく話しかける度胸くらいは持ち合わせてるけど、今日はリトが主役で、オレから見たら鬱陶しい賓客たちも皆リトを祝いに来てる。こんな席でリトに迷惑かけるなんてありえんと思って、仕方なくオレは会場の隅でさっきからずっとリトの周りから人がいなくなるのを待っていた。ミレニアムの初日、リトは多忙なスケジュールをこなしているらしく、笑顔で取り繕っているけど少し疲れているみたいだった。
…リト、初日からこんなんで大丈夫なんかな。
オレがそう思った時、リトが人垣を離れて会場から出て行くのが見えた。チャンスだと感じて、思わずその後を追う。リトの向かった先は関係者しか入れない控え室のある場所で、その非常口にリトの姿はあった。
「リト!!」
あまりにリトが早く歩いて追いつけないので、たまらずオレは叫んだ。
「ポーランド?」
リトはオレの姿を認めると、その足を止めた。
「ポーランド…来てくれたんだ。そういえば今日喋るの初めてだね。」
いつもはずっとオレの側にいるのにね、とリトがにこやかに言う。
「…オレの前でまで作り笑いしなくていいし!」
その微笑が癇に障って思わず怒鳴ってしまった。本当は待たされたのなんて気にしてないそぶりでリトにおめでとうって言いたかったのに。
「ポー?」
「……」
「オレ屋上行くんだけど、一緒に来る?」
オレが自己嫌悪に陥って何も言えずに黙っていると、少しため息をついてリトはそう言ってくれた。これもいつもの事だから、オレの気持ちと態度が違うのだと解してくれたのだと思う。だからその問いに俯きながら小さく頷いた。
リトと二人で非常口から外階段を通って屋上へ向かう。屋上についてすぐに目に入ったのは、さっきまでいた会場とはまた別の華やかさを放つ星空だった。珍しく雲ひとつない夜空で、冬の澄んだ空気が一層星々を煌かせているような気がした。
「…リト疲れとらん?」
二人ともしばらくは無言で星空を見上げていたれど、その沈黙をオレが破った。
「少しはね。でも皆が祝ってくれてるし…忙しいのは仕方ないよ。」
「リトはそれでいいん?」
「まぁ千年の記念なんてそうそうないし、いいんじゃないかな。」
千年―リトが物心ついてから実際にはどれほどの時間が経っているんだろう。
「…千年かぁ…」
「なあ、リトは今までの事どう思っとるん?」
何気なくそう思ってきいてみた。
「うーん、色々ありすぎて一言では言い表せないよ。…だって信じられないもの」「信じられんって何がなん?」
「もうそんなに経つだなんて。…オレが物心ついた時にはたくさんの国がまわりにいて、皆と争ったり仲良くしたりして目まぐるしかったもの……ポーランドとでさえ争ったこともあるのにね。」
本当はもっと複雑な過去があるはずなのに、あえてリトは簡潔に語る。
「でも良かったよ、なんだかんだいって今は独立してとりあえず平和だし。…問題は山積みだけどね。」
思うところがあっても文句が出てこないのはリトの性格もあるけど、現状に満足してるからなんかな。
「…リトの言う平和って何なん?誰とも戦争しとらん事?」
「まぁ、それもあるけど……今こうやって一緒にいられる事、かな?全てがうまくいってるわけじゃないけど、とりあえず落ち着いてミレニアムを迎えられるのは幸せな事だと思うよ。」
リトはわざとなのか、「ポーランドと一緒にいられる事」とは言わなかったのに、なんだか照れくさくて仕方がない。
「リト、さり気なく恥かしい事言っとらん?」
「え、そうかな?」
「…まぁええけど」
「これは単なる時間の区切りでしかないよ。またいつ何が起こるかわからないし。オレは…オレたちはもっと次の時代に夢を繋げられる力を持たなくちゃいけない気がする。」
穏やかな声でリトは呟くように言った。
「そうかもしれんけど…リト、やっぱオレなんか恥かしいわ」
あまり突っ込めないのと恥かしいのが相俟って、リトの顔を見れない。オレも数十年前に比べれば考えられないくらい幸せと言える状況にあって、リトとはお互いに独立して良好な関係を保っている。
だから口には出さないけどこんな風にリトのミレニアムを祝えるのは本当に嬉しいんよ。
「星…キレイやね」
「うん。なんだか昔を思い出すね。」
都会で仰ぐ夜空はかつて麦畑の中で見た満点の星空に比べれば大したことはないけど、オレたちを照らす古い星の光の優しさは変わっていないような気がしたし、一緒にいられる幸せをささやかに感じられるだけの温かさがあった。
「次のミレニアムも一緒に星見るんよ、リト」
「うん…そうだね。」
「絶対見るんよ、約束だし!」
リトが言ってたように、全てがうまくいってるとは言えないし、これは単なる時間の区切りでしかないからこの先がどうなるかは誰にもわからない。
確かにそうかもしれん。けど、それでも。
この長い年月の間に一緒に過ごせた日々が確かにあったから、これからもそれを続けていきたいと思うんよ。
リトも同じように思っていてくれるって信じてるし。
「なぁリト、そんな薄着で寒くないん?」
真面目に考え事をしていたのに心なしかお腹が空いてきてリトに話をふる。本当は寒いと思ってるのはオレの方で、リトもそれを解ってるから、早く中に入ろう、とリトを見上げると優しく微笑み返してくれた。
「あ…そうだね。そろそろ中に入ろうか。」
リトが言い終わらないうちにオレはリトに腕組みをして中へと急かす。今度は作り笑いじゃない笑顔で答えてくれたのが嬉しくて、その腕のぬくもりをとても愛おしく感じた。
一緒にいられる幸せ。
そんな小さな幸せは、途切れながらも確かに続いていくのだと思った。
fin.
***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「ミレニアム」。
リトアニアミレニアムなのにポー視点という残念なSSになりました。しかもリトほとんど喋ってないし(笑)
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