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夕食を作り終えて一息ついた頃、インターホンが鳴った。時計を見るとまだ七時をまわっていない。
今夜はハロウィンだから、こんな早い時間に訪ねてくるのはきっとアメリカさんかポーランドだろうと思いながらオレは玄関へ向った。

ドアの先にいたのは予想外の人物、ロシアさんだった。黒ずくめの格好をしていたので、誰なのか認識するまでに少し時間がかかった。これは魔女の仮装かなぁと思っていると、ロシアさんは「Trick or treat!!」とハロウィンではおなじみのセリフをオレに向って言った。
その展開について行けずに思考が止まる。ひとつひとつの出来事は理解しているのだけれど、しばらく言葉が出なかった。ええと…ドアを開けたら仮装したロシアさんがいて、「Trick or treat!!」と言っている。お菓子をあげないといたずらをされるんだっけ…。
「…リトアニア?」
ロシアさんが不思議そうにオレを覗き込む視線で我に返った。
「ああ、すみません!お菓子ですよね、ちょっと待ってください!」
お菓子をあげなきゃいたずらされてしまう!!オレは慌ててリビングに準備してあったお菓子を取りに戻った。
今日が何の日かはちゃんと知っているので用意はしていた。そのために朝からずっとお菓子作りに専念して、気付けば夕方になっていたのだ。普段作るものからハロウィン用にかぼちゃをベースにしたものまで、何種類かのお菓子を作ってラッピングもした。準備は完璧だったのに、どうしてこんなに動揺してしまったんだろう…。
「そんなに急がなくても大丈夫だよ。僕今日はずっとここにいる予定だし。」
「え…?」
いつの間にかロシアさんは家の中に上がりこんでいる。ちょっと待ってて下さいって言ったのに…って、ロシアさん今何て言った?僕今日はずっとここにいる予定だし?
「…どうしたんですか、急に」
オレはできるだけ冷静にたずねた。
「急じゃないよ、今日リトアニアの家に来ることは僕の中では大分前から決まっていたもの。」
「大分前から決まっていたなら連絡下さいよ…」
いたたまれなくなって、ロシアさんに聞こえないようにそう呟いた。ロシアさんはオレの意見なんて初めから聞く気はないみたいで、当然の事のようにリビングのソファーでくつろいでいる。
軽くため息をついて、オレは事態を受け入れる事にした。どんなに考えてもロシアさんを追い出す方法が見つからないし、今日はずっと家にいる予定だから話し相手がいるのもいいかなと思ったからだ。今日はポーランドたちも来るだろうからケンカしたりしなきゃいいんだけど…と一抹の不安を抱えながらも、オレは彼らが来るのを心待ちにしていた。

多めに作ってあった夕食をテーブルに並べていると、ロシアさんがお酒を要求してきた。あまり飲まれると相手が大変なんだけど、今日はちょっとしたお祝いみたいなものだからいいかなと思って買い置きしていたお酒をいくつか出す。
「ロシアさんもハロウィンに参加するんですね」
食事よりも早いスピードで減っていくお酒の本数を気にしながらオレは話を振った。
「うん。僕の家ではできそうにないからリトアニアの家にきたんだー。アメリカ君の家でも良かったんだけど、きっと彼は他の場所を回っていると思って。」
嬉しそうに話すロシアさんを見ていると、本当にハロウィンを楽しみにしていたんだなぁと思った。オレの都合を考えてはくれないけれど(あるいはオレが妥協することを見越しているのかもしれない)、この人の家は何かと不自由な事が多いから、わざわざここに来たのだと思う。
皆の輪の中に入りたい気持ちは誰にだってあるだろう。それが楽しいことなら尚更だ。ロシアさんは見かけによらず人一倍寂しがり屋だから、こんな風に照れくさそうに話されるとかわいいなと思ってしまう。
「…そろそろ皆来る頃だと思いますよ。お酒、そのへんにしといて下さいね。」
食器をさげながらそう言うと、ロシアさんは珍しく素直に言うことをきいた。すぐに流しで食器を洗っているオレの元へグラスと残りの食器を持ってきてくれたのでちょっと驚いたけれど、その直後に後ろから抱きつかれた事の方が驚きの度合いは大きかった。
「え、ちょっ…ロシアさん!?」
思わず食器を落としそうになったけれど、ロシアさんの動きが止まる様子はない。相変わらずオレの意見なんてききもしないんだから。
背後からだからキスこそされなかったけれど、ロシアさんの腕は的確にオレの服の中に侵入してくる。
「…何してるんですか……?」
「んーちょっとね…リトアニアは気にせず食器洗ってていいよ。」
「ちょっとって…気になりますよ。や、止めて下さい…!」
たぶん何を言っても無駄なのはわかっているけど言わずにはいられない。

「リトーお菓子もらいに来たしー……って、あー!!」
間の悪い所へポーランドがやってきた。
「ポ、ポーランド…どうしたの?」
あまり身動きのとれないオレは、首だけを動かしてポーランドの姿を確認する。キッチンの出入り口には、派手な女装をしたポーランドが呆れた様子で立ちつくしていた。
「どうしたじゃないし!それはオレのセリフだし!……なんでロシアがいるんよ?しかもお前リトに何しとるん?今すぐリトから離れろだし!!」
そう言うと、ポーランドはオレにひっついているロシアさんを離れさせようとした。当事者であるオレが言っても離れないんだから、当然ポーランドの要求にロシアさんが応えるわけはない。それどころかロシアさんは一層オレを強く抱きしめる。ポーランドがロシアさんに与える振動はこちらにも届くので、こんな状態ではとてもじゃないけど食器なんて洗えない…。
「ちょっ、ポーランドもロシアさんも止めて…!」
ああ、この二人の行動は言葉なんかで止められるものじゃない。それはこれまでの経験で十分わかっているのに……こんな時、どうするのが一番ベストなんだろう。
オレが頭を悩ませていると、力ずくでは無理だと判断したポーランドが今度はロシアさんを叩き始めた。
「…ちょっと痛いよ、ポーランド!」
「止めて欲しかったらさっさとリトから離れるしー!」
今にもコルコルしそうなロシアさんにポーランドは怯むことなく食って掛かる。
「嫌だよ。大体なんで君が僕たちの事に干渉するの?」
「なんでって…オレが気に入らないからに決まっとるし!」
「それなら僕が君の言う事きく義理もないよね」
「……お前はなんでリトにくっついとるんよ?」
論点のずれた二人の会話にオレはもう何も言えなかった。
「そんなの…いたずらしてるに決まってるじゃない。」
「いたずら…?」
「今日はいたずらしてもいい日なんでしょ?だってリトアニアは僕にまだお菓子くれないし」
未練がましそうにそう言われて、そういえばオレまだロシアさんにお菓子あげてないかも…と冷静に思った。でもそれはお菓子を取りに戻る間にロシアさんが家に上がりこんでたからで…ってロシアさんにとっては言い訳でしかないのか。
「…それなら仕方ないしー!」
ポーランドはあっさりそう言うと、「だったらオレもまだリトからお菓子もらっとらんからいたずらしてもいいんよね?」とひとり言のように呟いた。
「え…何それ。ちょっと、ポーランドまでどうしたの?…お菓子なら準備してあるし、ちゃんとあげるからとりあえず離してよ…!」
「いや、お菓子よりこっちの方が楽しそうだし。」
ポーランドがオレの言葉を遮るようにそう言うと、今度はそれを聞いていたロシアさんが、「えー君はお菓子もらって帰りなよ。リトアニアにいたずらするのは僕ひとりだけで間に合ってるよ。」と不満そうに言う。
「お前がいる限りオレは絶対帰らんし!!」
ああまた不毛な言い争いが始まった…。この二人って、オレをだしにしてケンカしたいだけなんじゃないかなとさえ思える。
オレがそんな事を考えていると、三人目の訪問者がやってきた。
「Trick or treat!!今日はハロウィンなんだぞ、リトアニア」
「アメリカさん…」
すがるような気持ちでオレはアメリカさんの名前を呼んだ。ヒーローを自称する彼ならこの状況を何とかしてくれるかもしれない(そういえば、どうして皆勝手にオレの家に上がりこんでくるんだろう…)。
「ところで君たちリトアニアを取り囲んで一体何してるんだい?」
「リトがお菓子くれんから代わりにいたずらしとるんよー」
いたずらっていうか、オレもうほとんど脱がされてるんですけど…。
ポーランドの返事にアメリカさんが目を輝かせるのを見て、彼がオレの救世主となり得ない事を悟った。
「楽しそうだからオレも混ざりたいんだぞ!」
「お前まで混ざったら余計ややこしくなるしー」
ポーランドが迷惑そうに怒鳴って、ロシアさんからアメリカさんに標的を変える。さっきの時点でもう十分ややこしくなってると思うんだけど…。
「リトアニア、こっち来て。」
ポーランドがオレから離れたすきに、ロシアさんがオレの手を引く。一体どこへ行くというのだろう。
「え…んんっ……」
キッチンを出てすぐの廊下、ちょうどポーランドたちからは見えない位置で、ロシアさんはいきなりオレにキスをした。
「ちょっ、いきなり何するんですかー」
「だって彼らの前でやったら皆が君にキスするよ?その方が良かった?」
そういう問題じゃないような気がするんだけど…と思ったけれど口には出さなかった。ロシアさんは「ホントはこのまま寝室に行ってもいいんだけどね」と続けると、言葉を詰まらせたオレを置いてポーランドたちのいるキッチンに戻っていった。どうやらアメリカさんたちとのケンカ(?)に加わるつもりらしい。三人ともとても楽しそうに見えるのはオレの気のせいなのかな…?
ロシアさんにポーランド、そしてアメリカさん。これだけのメンバーがそろったのだから、簡単に事が済むとは思えない。
そんな事を考えていると、インターホンが鳴った。今度は誰だろう?
とりあえず今度はお菓子をちゃんと用意してからドアを開けよう。そしてキッチンにいる三人にもこれ以上いたずらされないうちにお菓子を渡してしまおう。
ハロウィンはまだ始まったばかりだ。きっと長い夜になるだろうな、とオレは予感せずにはいられなかった。



   fin.

***
「リトアニアミレニアム」に投稿したもの。テーマは「ハロウィン」。

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