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R15です。
  イタク以外の男×淡島で事後。

大丈夫な方はどうぞ。




淡島はいつの頃からか泣かなくなった。正確には隠れて泣くようになったようで、部屋から出てこなくなることがよくある。
そんな淡島を宥めるのはいつの間にかイタクの役割になっていて、その日も仕方なくイタクは淡島の部屋を訪れた。
「淡島」
イタクがそう声をかけると、淡島はそれまで宙に泳がせていた目だけを無言のまま声の方向に向けた。
出ていけよ、と不快感を露わにしたその視線を無視してイタクは部屋の中に足を踏み入れる。
淡島が座り込んでいる部屋の一角から一番離れた場所に、女物の着物や簪といったイタクにはよくわからないような装身具が散らばっている。それらは淡島が望んで所有しているわけではなく、淡島の「女」である部分を利用しようと目論む一部の妖怪たちが立場上断られないのをいいことに強引に贈ったものだ。
普段は箪笥の奥に仕舞われているはずのその着物が今回の憂鬱の原因なのだろうかとイタクは淡島の傍で膝をつき、顔を覗き込んだ。
淡島は相変わらずイタクを睨みつけたままで全く動こうとしなかったが、その頬には涙のあとが見て取れた。
それがあまりにも痛々しく思えて、イタクは淡島の頭にそっと触れる。その行為に抵抗がないのを確認すると、背中に手を回して一気に抱き寄せた。
その先に何が待っているのかなど、淡島は一切気にもしていない様子でイタクに身を任せる。この類の行為で自分の意思が尊重された事はほとんどない、と言わんばかりの無抵抗。何をしても無駄なのだと諦めているように見えても、その瞳だけは違った。
これ以上睨まれるのはあまり心地良い事ではないと思ったイタクは、淡島の視界を遮るように自分の胸元へ押し込める。抗う意思も見せない淡島を意のままにするのは、イタクが考えていたよりもずっと容易く、虚しい作業だった。
イタクは言葉を選んで落ち着いた口調で淡島に話しかけた。
「泣いてたんだろ?泣けよ…見なかった事にしてやるから」
その言葉に反応した淡島はようやく顔を上げてイタクと目を合わせる。そして込み上げてくる怒りや悔しさがイタクにも伝わる程、静かに泣いた。
淡島の身に何が起きたのか本当にはわからない。それでも、こんな風に声を上げて泣く事もできないようにしてしまった要因は何なのかとイタクは考える。淡島が心から縋れないのはまだ周りに気を遣っている証拠で、もしかしたら淡島を追い詰めているのは自分たちの方なのかもしれないと思った。
今の淡島を見れば感情に行き場がない事は明らかだというのに、してやれる事はほとんどない。だからこそ淡島は一人で泣くのだ。
「…何のためにオレはいるんだ?」
気が付けばイタクはそんな事をこぼしていた。
ただ抱きしめる事しか今のイタクにはできない。それでも思いっきり泣かせてやる事もできずにいる自分が不甲斐なくてやりきれない気持ちで一杯だった。
「…イタク……?」
淡島はその日初めて口を開いた。
その声を聞いて、イタクは自分が口走った言葉の無責任さを思い知らされて、さらに情けなくなった。
「…何でもねーよ。」
すぐにそう言い直して前言を撤回するように、淡島を抱きしめる腕に力を込めた。
淡島は頭上から大きなため息がもれるのを聞いてなぜかほっとしたようで、やがてイタクの背中にそっと腕を回した。


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